なぜ若者も熱狂?フィリピン大統領選挙が“お祭り騒ぎ”になる理由
選挙権を得たばかりの若者もこぞって参加
木場紗綾: 日本においては、選挙は若者にとってはどうしてもなじみが薄いように感じられるかもしれません。しかし、フィリピンの全世代において、選挙への関心は日本よりも高めです。こちらは、前回の大統領選があった2016年に撮影した写真です。当時の候補者であったドゥテルテ大統領の最終演説会には、選挙権を得たばかりの若者も多く集まっていました。
こちらも同じく2016年に撮影した写真で、選挙当日に子どもがチラシ配りを手伝っている様子です。チラシには、親が支持している候補者の顔や名前が載っています。 こうして、若者たちや、まだ選挙権を持っていない子どもたちまでもが、選挙キャンペーンにこぞって参加しているのです。なぜフィリピンの国民は、老若男女問わず、みな選挙に熱狂するのでしょうか。その理由を具体的に説明していきます。
熱狂の理由その1――人気アーティストが応援に イベントを楽しみながら情報収集
木場紗綾: フィリピンにも日本の公職選挙法にあたる法律があるのですが、違反者も多く、とてもゆるいものです。候補者たちはとにかく湯水のごとくお金をかけて、毎日のように各地を練り歩いて演説会をイベントとして開催します。大型スクリーンやサウンドシステムを設営したステージで行われる演説には、人気アーティストやコメディアンが応援に駆けつけ、投票者にとっては無料コンサートのように楽しめるものになっています。フィリピン国民にとって、選挙キャンペーンは、非日常的な空間として楽しむものなのです。
さらに、選挙キャンペーンの最中は、さまざまな会場でTシャツ、帽子、ペン、缶バッジなどの候補者グッズや政党グッズが無料配布されます。水、お菓子、お弁当なども無料で配られることがあります。 ちなみに、あまりに熱狂的な盛り上がりを見せるフィリピン大統領選挙の投票日は、飲酒によって正常な判断ができなくなったり、ケンカが勃発したりするのを防止するため、前日および当日に酒類販売が禁止されます。 まるで“お祭り騒ぎ”の選挙キャンペーンですが、国民はただ無邪気に無責任に楽しんでいるわけではありません。彼らは、どの候補者にどのくらいの資金力があるか、どの政党のキャンペーンに活気があるか、どんな人たちがその演説会に来ているのか、近所の人たちはどこを支援しているのかなどを、この期間にしっかり観察しているのです。人々は何週間にもわたって、もらえるものはもらいつつ、選挙キャンペーンを楽しみながら、候補者や政党に関する情報収集をし、シビアに候補者の見極めをしています。