強がらないで、休んでもいい──19年連続で自殺率ワーストだった秋田、当事者がつなぐ“命の糸” #今つらいあなたへ
自分本位ではなく「一緒に悩みながら考えている」
須田さんは最初利用者だったが、ピアスタッフになって一回り大きく見えた仲間をみて、「自分も成長したい」と考えピアスタッフを志した。須田さんのピアスタッフとしてのキャリアはまだ2年弱と長くはないが、「人の話をしっかり聞けている」「優しい対応ができている」など、利用者からの評判がよかった。 その様子をみていたロザリンさんが、須田さんを自殺対策のLINE相談員に推薦した。「社会勉強だと思って」と言われて、研修会に参加した。終わってみると、少し考えが変わっていた。 「人に感謝される仕事ならばいいかな」 相談を受け始めた当初は、わからないことがあるとロザリンさんやLINE相談に初期から携わる鎌田悠香子さん(32)に質問しながら返答した。鎌田さんは当時の須田さんを覚えている。
「かたまっていましたね。返事をどう書けばいいのか、何を質問すればいいのかわからないという感じで。最初は返信するのに10分ぐらいかかっていることもありました。相談者はひきこもりの人だけでなく、死にたい気持ちを抱えた人、経済問題で悩む人など多種多様ということもあったんでしょうね。でもそれって彼がすごく優しいからだと思うんです。こう書くと相手はどう受け取るのか、どこまで聞いていいのか、逡巡するんでしょうね」 しかしいざ書くと、伝わりやすい、センスのいい文章を書いていた、と鎌田さんは言う。 須田さんは相談を受ける際、自分に言い聞かせていたことがあった。 まず相談者と「信頼関係を結ぶこと」。信頼関係のない人のアドバイスは自分自身も受け入れられないからだ。そして「共感を大事にする」。相談者の悩みを聞いて、例えば「自分もそういう時期がありました」「自分もあなたと同じ立場になったら同じことをするでしょう」などと書くこともある。さらに「自分の思い込んだ助言に誘導するのではなく、同じ目線で一緒に考え、話を整理して、相談者自身が考えるとき、視野を広げられるようにすること」を意識する。決して自分本位ではなく「一緒に考えていきましょう」という姿勢を続けた。