お花見ができなくなる?サクラを食害する外来種「クビアカツヤカミキリ」とは
クビアカツヤカミキリの防除方法とは?
最近、昆虫病原性糸状菌ボーベリア・ブロンニアティを製剤化した「微生物農薬」がクビアカツヤカミキリ防除剤として登録されました。この剤はもともとゴマダラカミキリやキボシカミキリなどのカミキリムシ害虫用に使用されていたものですが、クビアカツヤカミキリの被害拡大を受けて、農水省が急遽適用を拡大しました。 この微生物農薬は、カミキリムシに対して病原性を発揮する菌を含むシートを木の幹に巻きつけておいて、そのうえをカミキリムシの成虫が歩いて接触することで菌が感染し、成虫を死に至らしめるという防除剤です。しかし、この方法も、たまたまこの防除剤シートの上を歩いた成虫しか殺虫できない上に、樹木の中に寄生している幼虫には効果がないため、カミキリムシ集団を完全に駆除することは難しいと考えられます。 オスのフェロモン成分でメスをおびき寄せて効果的に捕殺するフェロモン剤も提案されてはいますが、実用化までにはおそらく相当な時間を要すると考えられます。 浸透移行性殺虫剤を使用するという手もなくはありません。ネオニコチノイド系農薬は植物体内を移行して、植物体の隅々にまで行き渡り、害虫がその植物を食害したり、吸汁したりすることで植物体中の薬剤に暴露して死に至るという殺虫剤です。日本では稲の箱苗に粒剤として投与して、根から薬剤を吸収させてから、田植えをすることで、ワンシーズン害虫を防除できる殺虫剤として広く使用されています。本系統剤にはカミキリムシにも卓効を示すものがあるので、液剤をサクラの樹幹に注入することで、樹幹内のカミキリムシの幼虫を効果的に防除することができると期待されます。 しかし、ネオニコチノイド系農薬は、その殺虫効果の高さゆえに、近年、ミツバチをはじめとするハナバチ類や野生昆虫の減少を招いているのではないかといった環境影響が強く疑われている薬剤であり、十分な生態リスク評価をせぬままカミキリムシ防除に安易に使用することは避けなくてはならないと思われます。 結局、現時点でもっとも有効な防除方法は、被害を受けた樹木とその周辺に生えている樹木をまとめて伐採して、焼却するという物理的防除になります。実際に本種が侵入したドイツでは、はやい侵入段階で被害エリアの伐倒処理という強硬策をとったことで、本種の拡大を抑制できたとされています。