お花見ができなくなる?サクラを食害する外来種「クビアカツヤカミキリ」とは
被害を広げないために木を切り倒すという方法も
我が国においても愛知県では、早い段階で伐倒処理を実施しているケースはありますが、多くの現場では、まだ踏み切れていない状況が続いているようです。理由の一つに桜の木を管理・監督する行政部局が、植えられている場所によってばらばらであり、国定公園・国立公園内であれば環境省、農耕地であれば農水省、国有道路の街路樹であれば国交省、という具合に行政の縦割りが横たわっており、防除の連携が取りにくい状態になっています。 また、これらの敷地以外に植えられている桜の多くが個人もしくは自治会の所有物であり、木を切り倒すことに必ずしも同意が得られないというケースも少なくないようです。 長年、春が来るごとに花見を親しんできた街の桜を切ることに、ためらいや反感を覚えることは住民感情として避けようのないことだと思われます。しかし、時間がたてばたつほど、外来カミキリムシは分布拡大を続け、最悪の場合、日本中のサクラが被害を受けて、もうお花見をすることもできなくなるかも知れません。 なぜ、いま切る必要があるのかを科学的・理論的に説明して、合意形成を進めることで伐倒処理の道を切り開くことが行政ならびに研究者の喫緊の課題と言えます。 なお、このカミキリムシは2018年1月に環境省「外来生物法」の特定外来生物に指定されています。したがって、本種を捕獲して飼育したり、生きたまま採集場所と異なる地点へ移動させたり、逃がしたりすることは一切禁止されています。もし、このカミキリムシを発見した場合は速やかにお近くの役場に届け出るか、環境省・地方環境事務所に連絡をいれて頂きますようお願いいたします。 (解説:五箇公一 国立研究開発法人 国立環境研究所 生態リスク評価・対策研究室室長)