なぜ「政権交代の壁」を崩せなかったか 石破政権延命、「政治とカネ」にけじめは?【解説委員室から】
◆自民案は「新たなブラックボックス」? 10日から衆院政治改革特別委員会で政治資金規正法再改正の議論が始まった。自民党、立憲民主党などがそれぞれの法案を提出。自民党は企業・団体献金について結論を来年以降に先送りし、政策活動費の廃止や第三者機関設置などを盛り込んだ法案を自民、公明、国民民主で通そうと目論んでいるようだ。 自民案は、使途を明らかにしなくてもいい政策活動費の廃止に関し、外交秘密、プライバシーなどに配慮して一部支出に非公開の余地を残す項目が盛り込まれ、野党側は「新たなブラックボックスをつくるもの」と批判している。この項目は当初、「要配慮支出」という名称で表記していたが、9日に「公開方法工夫支出」に変更された。一部を非公開とする印象をできるだけ持たれたくないという意図もうかがえる。 「政治とカネ」の問題を巡り、最後まで与野党の対立は解けず、最後は「数の力」で法案を押し通すかもしれない。その場合、少数与党の自公にとっては国民民主の協力が必要不可欠。最終局面では国民民主の姿勢が問われる。自民が予算や税制で譲歩すれば、国民民主はよほどのことがない限り、企業・団体献金の禁止を盛り込まない政治資金規正法再改正の自民案にも同調するのではないか。 ◆参院選前に裏金問題「幕引き」できるか こうした政治の動きや結果を、来夏の参院選を前に世論がどう見るか。特に忘れてはならない重要課題は、裏金問題の真相解明だ。自民党としては参院選までにできるだけ早く裏金問題の幕引きを図りたいところだろうが、対応を誤ると、大敗した衆院選の二の舞となりかねない。 政治資金収支報告書に不記載があった自民党旧安倍派の参院議員32人に対しては、今年3月、参院政治倫理審査会で審査することを全会一致で議決したが、これに応じて政倫審に出席したのは世耕弘成、橋本聖子、西田昌司の3氏のみ。今回、自民を離党した大野泰正氏と衆院選出馬で自動失職した丸川珠代氏を除く27人が11月28日までに、政倫審出席の意向を伝えてきた。 このうち来夏の参院選で改選される議員は15人(引退予定議員除く)。衆院選では政倫審に出席しなかった候補者が公認されなかっただけに、選挙への出馬を目指す参院議員の気持ちは分かりやすい。23人が非公開での開催を希望し、与野党で調整している。 「政倫審は『駆け込み寺』ではなく、(裏金事件の)真相が明らかにされる場でなければならない」(小池晃共産党書記局長)というのは当然のこと。しかし、何も知らない、分からないと真相を語らない議員が続出すれば、世論の批判が再燃する可能性もある。 裏金問題を追及してきた立民の小西洋之参院議員は「改選される参院の裏金議員をどう扱うかは、石破政権の最大の課題だ。石破内閣の政治改革に対するけじめが足りないということになれば、参院選の争点になる」と語る。石破首相や自民党が参院選候補の公認、非公認問題にどのような決定を下すか。その「けじめ」のつけ方次第で参院選の行方も大きく左右されよう。