公務員は安定ではなかった...元自衛官が職場に満足してても「転職活動をやめない」理由
年齢も価値観もバックグラウンドも異なる人たちと共に働く職場で、人間関係の悩みは避けて通れないもの。わび氏は自衛官時代、上司からのパワハラを受け、一度はメンタルダウンを経験。その後転職を果たし、現在は自身の経験から得た「メンタルダウンしないための対策」を発信している(Xフォロワーは17万人超)。『THE21』12月号ではその知見を聞いた。(取材・構成:横山瑠美) わび氏をメンタルダウンに追い込んだ自衛官時代の境遇 ※本稿は、『THE21』2024年12月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。
順風満帆だった生活がパワハラでメンタルダウン
今は会社員の私ですが、かつては陸上自衛隊の自衛官でした。職場の人間関係には恵まれていたと思います。入隊から10年間は順風満帆そのものでした。 ところが、転属をきっかけに、上司によるパワハラが始まりました。私からの連絡や相談はすべて後回しにされた挙句、やっと時間を取ってもらえたと思ったら、長時間の指導と人格攻撃を受けます。それらを部署全員の前でされたこともあります。上司の矛先は仕事に関することに留まらず、弁当の中身や乗っている車など、些細なことにまで言いがかりをつけられました。 このような攻撃を受け続けた結果、日々の仕事は停滞。ただでさえたくさんある仕事にますます時間がかかるようになりました。パワハラに耐えながら、早朝5~6時から深夜1時ごろまでの激務に従事し続けていたのです。 それでも私は、「自分の働く場所はここしかない」と思い込んでいました。大学卒業後、すぐに入隊したため、よそでは通用しないと思っていたのです。プライベートでは子どもが生まれたばかりで、今退職するわけにはいかないという思いもありました。幹部自衛官であり、下からどう見られているかも相当意識していました。苦しんでいる姿を見せるわけにはいかなかったのです。 ついにはまともな思考ができなくなり、パワハラを受けるのは「自分の努力が足りないせいだ」と自責の念にかられるまでになりました。誰かに相談したり、転職を考えたりすることさえできなくなっていたのです。 心身もSOSを発していました。食事がのどを通らない、眠れない、寝ても夜中に何回もトイレに起きる──。街中で「この車にはねられたら仕事を休めるかもしれない」と考えたこともあります。ここまでが、10年ほど前のことです。 その後メンタルダウンから回復し、転職にも成功しましたが、あのときは本当につらい、どん底の時期でした。 今は「人生100年時代」と言われ、働く期間はどんどん長くなっています。長く働き続けていれば、楽しいことばかりではありませんし、ときには私のような「危機的状況」が起こらないとも限りません。長く働き続けるためにも、日々のストレスをうまく解消しながらメンタルダウンしないようにすることが大切です。