「誤報が8割」でも異議はなしーー児童を守る品川区の防犯ケータイ20年 #こどもをまもる
東京都品川区では小学生を対象にキッズケータイを無償貸与している。防犯ブザーやGPS機能のほかに、有料ではあるが通話機能も利用できる。ハイテクとローテクを組み合わせた独自のシステムを構築してから20年。品川区に住み二人の小学生の子を持つ筆者が感じた、児童見守りシステムの強みとは。(取材・文・撮影:キンマサタカ/撮影:豊田哲也/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
ブザーを鳴らすとすぐにコールバック
午前8時。品川区にある小学校の通学路。友達と待ち合わせて笑顔で学校に向かう子どもたちの首から、白い物体がヒモでぶら下がっているのがわかる。 これは品川区在住の小学生へ入学時に配布されるキッズケータイだ。子どもたちが「まもるっち」と呼ぶ小さな端末は、小学校卒業と同時に返却する必要があるが、区内の公立小学校はもちろん、区外の国立・私立小学校等に通う児童も申請をすれば貸与される。現在1万8000人ほどの児童が利用している。
品川区在住の筆者は、毎日小学生であるわが子の「まもるっち」を目にしている。約105gというから一般のスマホの3分の2くらいの重さだ。万一ぶつけても大丈夫なようにゴム製のカバーがついている。 この記事を書くにあたり、まもるっちを手に取り、機能などを確かめていると、子どもが声をかけてくる。 「気をつけてよね!」 間違えて本体についた防犯ブザー用ストラップを引っ張ると、緊急を知らせるアラームが大きな音で鳴り、同時に非常を知らせる通報が入るからだ。子どもたちのほとんどは「誤報」を経験している。
通報先は、品川区役所内にある「まもるっちセンター」だ。防犯ブザーを引けばすぐにセンターのオペレーターにつながる。児童に異変がないか状況を把握するためだ。 センターからの着信があると強制的にハンズフリーで通話が始まる。同時にGPSで児童のいる位置がオペレーターのもとに届き、現在地を把握できる。緊急性を要する事案のときはすぐに警察に連絡する。 「原型が考案されたのは2003年頃。児童を狙った痛ましい事件が続いたことが、システム導入のきっかけとなったそうです」 そう語るのは、まもるっちを管轄する品川区生活安全担当の森田武人課長(49)。実はケータイ端末だけでなく、品川区が構築した「通報・管理・見守り」などのシステム全体を総称して「まもるっち」と呼ぶ。NPO法人の発案で現在のシステムの基となる仕組みが生まれたのが20年ほど前のことだった。