「誤報が8割」でも異議はなしーー児童を守る品川区の防犯ケータイ20年 #こどもをまもる
「子育てなら品川区」と自信をもって言える街に
「品川区のいいところをアンケート調査したり、タウンミーティングなどで聞いたりしたんですけど、『まもるっち』という声が本当に多いんですよ」 そう語るのは、2022年末に就任したばかりの森澤恭子品川区長(44)。自身も小学生の二人の子を持つ。区長選挙に出るにあたってリサーチを重ねたところ、多くの親から品川区の見守りシステムを褒めたたえる声が聞かれたという。遊びに夢中になり外が暗くなっても帰ってこないときも、子どもとすぐに連絡がつくから安心できるという声は確かに多い。 「区外でも見慣れたキッズケータイを首から下げている子がいたら、『品川区の児童だな』と思いますね。身につけているだけで犯罪の抑止力としても機能している気がします」(森澤区長) 通常のキッズケータイは、防犯アラームを鳴らすと保護者などの緊急連絡先に通知が行くが、品川区ではまもるっちセンターで一括して通報を管理している。
人気(ひとけ)のあるアナログな体制もポイント
品川区のシステムが独自なのは、人による見守りの体制を構築している点だ。たとえば不審者の出没情報があった場合は、センターから近隣をパトロール中の生活安全サポート隊に連絡する。区役所内にも遊軍の隊員が常駐しているため、出動を要請することもある。サポート隊には元警察官を採用している。緊急の事案が発生した場合はすぐに110番通報する。 システムが本格スタートする前のテスト段階では、児童からの発報があったら、すぐに近隣に住む「協力者」に連絡をして、現場に足を運んでもらい、児童の安全確認をお願いする、というスキームを想定していた。ただ、テスト中に誤報が相次いだこともあり、また協力者の徒労が予想されたため、オペレーターが一元管理するシステムに統一した。現在までこの運用が続いている。 「現在でも80%が誤報」(森田課長)で、センターが対応できない夜間の通報は17%(その場合は登録された緊急連絡先に連絡が行く)。残りの3%は、「子どもが家に帰ってこない」「まもるっちをなくした」などの保護者や学校からの連絡だ。 警察に対応を依頼した事案は、令和3年度で14件。それらは不審者からの声掛けや、車との接触事故などであったというが、警察に通報すると同時に、児童の氏名と、まもるっちセンターで把握したGPS情報を警察に共有したという。連れ去りや児童に対する重大な犯罪行為はまもるっちの運用開始以来これまで認められていないが、数字に見えないところで抑止効果が出ているともいえるだろう。