「辞める以外に選択肢が…」メンタルヘルスの危機で仕事を諦めるZ世代が増加。英国での経済損失は「22兆超」
それは朝のちょっとした息切れから始まり、胸をギュッと締めつけられるような感覚へと変わりました。その後は心臓がドキドキし、まもなく、サマンサは深刻な不安に見舞われ、出かけることを考えただけで本当に吐き気がしてきたと言います。そして、銀行の窓口係という仕事に従事することは、ほぼ不可能になりました。 【写真】スマホのアプリ配列を変えるだけ!? 精神科医おすすめ「脳が疲れにくくなる方法」10選 「細かい気配りが必要な仕事でした」と『コスモポリタン イギリス版』に語るサマンサは、PTSDを患う人々の1人。「仕事をするときはいつも新しく出会った人と話すのが苦痛でした」とのこと。サマンサの直属の上司は理解があり、職場で不安に襲われたときは休めるように配慮してくれましたが、その上司となるとまったくそんな風ではなかったのだとか。「彼らが基本的に言っていたのは、文句を言うなということでした」「結局、あまりに状況が悪くなったので、医師に8週間休暇をとるように診断されました。有給休暇を使い切ってしまい、事態もまるで改善しなかったので、辞めざるを得ませんでした」とサマンサ。
サマンサはメンタルヘルスの不調から仕事ができなくなってしまった20代前半の多くの人々の1人に過ぎません。イギリスのシンクタンクResolution Foundationが2024年2月に発表したレポートは、この問題の根深さをうかがわせる、憂慮すべき事態を伝えています。というのは、イギリスの若者20人のうちの1人が、健康問題によって「経済活動に従事して」おらず、これは40代のそれよりも高い割合。レポートは20代前半におけるメンタルヘルスが悪化の一途をたどっていて、他のどの年齢層よりもその割合が高く、一般的な心の病の発症率は20代前半が一番低かった20年前とは逆の結果に。
2021年から2022年の間に、18歳から24歳までの若者の34%がうつ病、不安障害、双極性障害などの症状を報告しました。これは20年前の24%に比べて、劇的な増加です。では、何がこうした急激な悪化を引き起こしているのでしょうか? 新型コロナウィルスのパンデミックによるロックダウンで、若い人々が学校や仕事、社交の機会を奪われたことは、孤独に陥った原因として容易に指摘することができます。オックスフォード大学のある研究によると、ロックダウン以後では、それ以前よりも10代におけるうつ病、感情や行動における障害、社会的な不適応などのレベルが高まったとの結果が出ました。もっとも、こうした問題の原因をパンデミックにのみ還元するのは単純過ぎます。20代前半の人々を苦しめているメンタルヘルスの危機には、他にも数多くの要因がからんでいるのです。