大阪ガスの時価総額が東京ガスを20年超ぶりに逆転、株価を押し上げた「2つの原動力」
今回は東京ガスと大阪ガス、大手ガス会社2社の決算書をひもといていこう。2024年春、大阪ガスの時価総額が東京ガスを上回った。実に20年超ぶりのことだという(24年12月の本稿執筆時点では、再び時価総額で東京ガスが逆転したが)。大阪ガスの株価が上昇した背景には、同社が新たに目標値として掲げた「新指標」の効果があったとみられる。その指標とは。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介) 【この記事の画像を見る】 連載『ビジネスに効く!「会計思考力」』をフォローすると最新記事の更新をメールでお知らせします。 ● 大阪ガスの時価総額が20年超ぶりに 東京ガスを逆転した理由とは? 今回は、脱炭素への対応でも注目を集めるガス会社から、東京ガスと大阪ガスの決算書を取り上げる。 両社の株式価値の総額を表す株式時価総額(以下、時価総額)を比較すると、東京ガスが長らく業界首位の座を守っていたが、2024年春には大阪ガスが東京ガスの時価総額を抜いたことでも話題になった(その後、東京ガスが再逆転し、24年12月10日時点での時価総額〔自己株式を除く〕は東京ガスが約1兆7120億円、大阪ガスが約1兆2700億円となっている)。 東京ガスの24年3月期連結決算は、売上高が約2兆6650億円、営業利益が約2200億円、親会社株主に帰属する当期純利益(以下、当期純利益)が約1700億円となり、過去最高を記録した23年3月期からの減収減益となった。 一方、大阪ガスの24年3月期決算では、売上高は約2兆830億円と前期比減収となったが、営業利益は約1730億円、当期純利益は約1330億円と前期比増益で、いずれも過去最高益を記録した。 今年の春に時価総額が逆転したのは、こうした決算の明暗によるものだと見えるかもしれないが、理由はそれだけではない。 大阪ガスが新中期経営計画で導入を表明した新株主還元指標「DOE」(純資産配当率)が大きく影響しているのだ。今回は、こうした指標にも着目しながら、大阪ガスの時価総額が増加した背景について決算書から読み解いていこう。