松本幸四郎と尾上松也が悪の華を咲かせる! 伝説の舞台『朧の森に棲む鬼』が歌舞伎NEXTとして上演決定
■欲望に忠実な男、ライはある意味正直者!?
部長 お二人が演じる「ライ」という男は、その名のとおり、嘘で人をだまして、舌先三寸でのし上がっていく悪い男です。でも、小物だったライが王にまで成りあがっていく姿がなんともいえず美しく、儚くて、魅了されてしまった人は多いと思います。お二人はライという男をどんな人物だと思っていますか。 松也 以前、僕も劇団☆新感線の『メタルマクベス』disc2という作品に出させていただいたことがあるんですけれど、マクベスとは悪の色合いが違うという感じがします。ライの信念と正義がどこにあるのか――ということではなくて、結局、欲望のためには、何でもやる男なんですね。「そこまでやるか」というくらい悪いので、純粋に悪行に身を任せていくうちに、演じている自分も高揚していきそうな感覚があります。 幸四郎 ただ悪いだけではなくて、実際、ライは結果を出しているんですよね。舌先三寸とはいえ、知恵で成りあがってトップに立つ。これは快感ですよね。そしてある意味、ライは正直だと思います。自分が手に入れたいものを、どういう手段を使ってでも手に入れる。金も女も権力も。そして欲しいものを手に入れたら、さらにもっともっと欲しいものが出てくる。だからフィクションの世界でないと生きられない男だし、舞台の上でないとできないものをやっているという、そういう作品だと思いますね。 小僧 歌舞伎NEXTでも、劇団☆新感線の脚本家・中島かずきさん、演出家・いのうえひでのりさんが、今回も脚本と演出を担当されますけれど、楽しみにしていることはありますか。 幸四郎 劇団☆新感線の方々が持っているものと、歌舞伎を混ぜたら何が生まれるか、ですね。だから歌舞伎が持っている引きだしを稽古場でどれだけいのうえさんにぶつけられるか、提示できるか、っていうところだと思います。そこは一つの勝負ですね。ここは歌舞伎の演出でやる、ここは新感線でやるっていうことじゃなくて、全部混じり合わせたものを作りたいと思っています。