第一三共ヘルスケア、メンバーが一丸で取り組んだサイトリニューアルで、アクセシビリティを改善。プロジェクトの進め方のポイントを聞いた
リニューアルのスケジュールが前倒しに
コーポレートサイトの規模は、PDFを除いて3000ページほどと、かなりページ数が多い。これは、製品数やブランド数が多いことが背景だが、それに加えて個々の製品ごとに一問一答でFAQがあり、膨大なページ数になっている。 FAQは専門のグループで運用しているが、サステナビリティを担当する部署、お問い合わせを管理する部署、採用を担当する部署など、コーポレートサイトには関係する部署が多い。
2022年度中にウェブアクセシビリティのガイドラインを決め、その次の年末(2022年12月)にリニューアル実施パートナーのコンペを実施。2024年6月を公開目標として、プロジェクトがスタートした(改正法は「公布日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」とされていたことから、「2024年6月施行」と見込んでいた)。当初のスケジュールは以下のとおりだ。
まず要件定義をして、次に設計、デザインと実装に進むという流れになっている。実は、当初は改正から3年以内の2024年6月の改正法施行を想定して進行していたが、プロジェクトの途中で4月施行が決定。そのため、4月1日公開に間に合うようにすべてのスケジュールを前倒しした。社内関係者の理解と協力、制作会社との密な連携と、プロジェクト全メンバーが一丸となって取り組んだことで、きちんと改正法施行に間に合う形で公開できた。
リニューアルコンセプトを定義し、各部署のヒアリングに時間をかけた
プロジェクトでは、最初に広報グループ(現在の広報部)でワークショップを実施し、コーポレートサイトリニューアルに向けた課題感やゴールの目線を合わせた。重要ワードを抽出し、リニューアルコンセプトを定義。その結果決まったのが、記事の冒頭で述べたリニューアルの目的だ。 「スケジュールの中で、もっとも時間をかけたのが設計の部分だった」と加藤氏は言う。 ┌────────── 以前のコーポレートサイトでは製品情報がメインだったため、対象ユーザーは主に製品を検討・購入している方だった。しかし、企業姿勢を知っていただくこともコーポレートサイトの役割に含まれたため、就活生や取引先に対しても、「何を求めて訪問いただいているのか」をもう一段階突き詰めて検証することが必要でした。そういう方々にどのような満足を提供できればよいのかを、各部署にヒアリングすることにかなり時間をかけました(加藤氏) └────────── コーポレートサイトのユーザーテストは何度か実施したことがあるが、社内の各部署に対するヒアリングをする場がなかった。今回のリニューアルでは、ウェブアクセシビリティと同時に「企業の想いが伝わる」ことも目的になったため、その部分に時間をかけたということだ。 ┌────────── 関係部署が多いため、設計について想定していたよりも時間がかかりましたが、関係者全員が一丸となることで、コーポレートサイトに対する意識が変わりました。実施してよかったと思っています(加藤氏) └────────── 最終的には、企業姿勢を表すトップページの実現や、さまざまな方の健康をサポートするセルフケア情報の拡充のほか、サステナビリティ情報の拡充、FAQ情報の探しやすさ向上など、各部門のニーズを踏まえて情報を刷新した。 また、ウェブアクセシビリティの専門家に協力をあおぎ、情報アクセスに困難がある当事者によるチェックも実施した。さらに、ウェブアクセシビリティだけに注力してユーザビリティがおろそかになってはいけないので、ユーザビリティの専門家を交えることで、「使えること」+「使いやすいこと」の両立にもこだわった。