保険会社CEO殺害事件、容疑者は名家出身のエリート 映画『ジョーカー』のようだとSNSで賞賛を集める異常な事態に【米】
現地時間2024年12月4日(水)にアメリカの医療保険大手ユナイテッドヘルスケアの最高経営責任者ブライアン・トンプソンがニューヨーク・マンハッタンのミッドタウンの路上で背中などを撃たれて死亡するという事件が発生した。 【写真】熱狂的な人気を博している、容疑者の素顔とは? 実行犯は現場からそのまま逃走、警察は男の画像などを公開し追跡。警察は12月9日(月)にペンシルベニア州アルトゥーナのマクドナルドから通報があり、ルイジ・マンジョーネを拘束、銃の不法所持の疑いで逮捕した。彼はその後トンプソンの殺害で起訴された。大企業のCEOがニューヨークの路上で射殺されるという衝撃的な事件は当然多くのアメリカ人の注目を集めているが、その注目度がダークな色合いを帯び始め、『ジョーカー』さながらの社会問題となっている。
保守派資産家一族出身の超エリート
26歳の『ジョーカー』のアーサー・フレックと異なるのは、マンジョーネ容疑者はメリーランド州の名家出身であること。「NY タイムズ」は従兄弟のニーノ・マンジョーネは共和党のメリーランド州下院議員で、一族は保守派の政治番組を放送するラジオ局も所有する資産家。 複数の現地報道が伝えるところによれば、名門私立男子校ギルマン・スクールを優秀な成績で卒業後、アイビーリーグの1つペンシルベニア大学に進学したエリートでコンピュータサイエンスのスペシャリスト。当初、殺されたのが保険会社のトップだったことから、犯人は医療費が払えない経済的に困窮した人物ではないかと同情、医療保険業界に対する不満が噴出するきっかけになった。また彼が痛みの激しい背中の怪我に苦しんでいたという報道も出た。とはいえ、ストリートカメラに収められたようにサイレンサー付きの銃で背後から銃弾を撃ち込むという残酷な事件であったことは変わりない。 しかし彼への人気は衰えない。今やセレブ並みの注目を集め、毎日ニュースを賑わせている。 放送局「BBC」の報道によると事件が起きた直後から、ニューヨークのワシントンスクエア・パークには逃亡時のマンジョーネに似たフーディーを着た若者たちが集まり、犯人を称え始めた。そっくりさんコンテストまで行われていたことからも、まるでホアキン・フェニックスが演じた映画『ジョーカー』さながらの熱狂ぶりうかがえる。SNSには彼を「CEOアサシン(暗殺者)」と称えるコンテンツが溢れ、Spotifyでは彼に捧げるプレイリストまで作られた。 この熱狂はマンジョーネが逮捕されてからは、さらにヒートアップ。SNSでは「#FreeLuigi」や、それに類するハッシュタグをつけた投稿があっという間に5万を超え、数千万のインプレッションを獲得している。これは7月に起きたトランプ次期大統領の暗殺未遂事件の数を超える。起訴が報じられると、今度は弁護士費用の募金活動が活発化。匿名の支持者が何千ドルも寄付している。 反対に、彼が店に来たことを通報したマクドナルドの店員はネット上で中傷されている。口コミサイトでは逮捕現場となった店舗はもちろん、マクドナルド全体が大炎上。「カウンターの後ろに巨大なネズミ(密告者の意味)がいる」「キッチンはネズミだらけ」というレビューが投稿*されている。さらに彼を逮捕したアルトゥーナの警察にも警察官に対する脅迫状が届いている。