【単独インタビュー】レアンドロ・エルリッヒが、新作に込めた想いとは? 『森の芸術祭 晴れの国・岡山』の見どころを解説
6.森山未來~伝承民話「さんぶたろう祭り」と前夜祭のパフォーマンス~
ここまで紹介した作品を含め、様々なハードコアな体験もできるこの芸術祭の奥深さを象徴していたのが、奈義町現代美術館から那岐山へと伸びる「シンボルロード」で行われた森山未來のパフォーマンスと、その翌日に開催された「さんぶたろう祭り」だ。 プレビューの夜、森山は奈義町に伝わる横仙歌舞伎の芸能者に学んだ三番叟と、彼自身の振付によるコンテンポラリーダンスを組み合わせた舞を披露した。翌日(9月28日)、伝承民話「さんぶたろう」をもとに奈義町の人々を巻き込んでつくりあげた祭祀の本番を目撃することは叶わなかったが、このイベントは本芸術祭に通底するテーマともいえる「土地に根ざした文化こそが人々のコミュニティを支える礎となる」ことを示したに違いない。なぜなら「祭りは防災である」という森山のコメントに覚醒させられたからだ。伝統的な祭りがアクティブに行われ続けている町には強固な連帯意識が形成され、自然災害などの緊急時に底力を発揮するという。森山はこのプロジェクトの制作過程を通して、ローカル・コミュニティの持つ強みを肌で実感したのである。 震災に次ぐ水害という能登の状況に祈ることしかできない無力さを感じる現在、本芸術祭の体験は格別の印象を残した。森山が「宝物」と呼ぶように、かけがえのない風土を懸命に守り続ける人々の営為が尊い実を結ぶことを信じたい。
『森の芸術祭 岡山』
開催期間:9月28日(土)~11月24日(日) 開催場所:岡山県県北部12市町村(奈義町、津山市、鏡野町奥津渓、真庭市蒜山、勝山、新見市満奇洞・井倉洞ほか) 開館時間:各施設の営業時間に準ずる 休館日:各施設の営業時間に準ずる
文:住吉智恵