はやぶさ2が挑む「世界初」人工クレーター生成実験とは?
小惑星「リュウグウ」へのタッチダウン(着地)を成功させた小惑星探査機「はやぶさ2」。あれから1か月半。大成功の余韻に浸る間もなく、早くも次のミッションに臨んでいます。衝突装置(SCI:インパクター)でリュウグウの地表に人工のクレーターをつくる実験です。この試みは、初代「はやぶさ」では考えもしなかった新たな挑戦なのです。(科学ライター・荒舩良孝) 【動画】「はやぶさ2」が人工クレーター生成実験 JAXA管制室と会見をライブ配信
トラブルを乗り越えて成功させたタッチダウン
まず、成功した2月のタッチダウンを振り返ってみましょう。はやぶさ2のタッチダウン運用は、2月20日から始まり、翌21日午前8時ごろから、リュウグウ表面に向けて降下を開始する予定でした。しかし、21日午前7時ごろ、降下開始の判断をするために、はやぶさ2の位置を確認したところ、予定と大きくズレていることが判明しました。 運用チームは、はやぶさ2に何が起こったのかを知るために、情報を集めました。その結果、タッチダウン運用を実施するために送ったプログラムの実行された順番がよくなかったことが分かりました。プロジェクトマネージャーの津田雄一さんの頭には、「中止」という言葉もよぎったそうですが、「諦めないとしたら何ができるか」と思い直し、チームメンバーと対応を協議したといいます。 降下直前に何らかのトラブルが起こることは、想定されてもいたことです。事前の地上訓練では、同じような状況でトラブルが発生し、復旧する訓練も行ってきました。その訓練の経験から、5時間で復旧できると判断され、降下開始の時間を繰り下げました。 実際その通りにトラブルは5時間で解消され、21日の午後1時13分にタッチダウンに向けた降下が開始されました。はやぶさ2は、通常、安全を重視し、ゆっくりとリュウグウに近づきます。当初は、高度5キロくらいに近づくまで秒速40センチで降下する予定でした。しかし、5時間分の遅れを取り戻すために、秒速90センチの速さで降下を開始。同日午後5時33分にはもともと予定していた降下軌道に入り、午後6時33分には秒速10センチにまで速度を落として、リュウグウへと迫っていきました。 その後も順調に高度を下げていき、運用チームは22日午前6時31分、タッチダウンの最終判断の局面において「GO」を出し、はやぶさ2に指令を送りました。はやぶさ2は自律運転モードに入り、午前7時29分にリュウグウ表面へのタッチダウンを成功させました。