大阪・金剛バスの撤退が問う地方交通の未来 地元自治体は悔やむ「もっと連携を密にしていれば…」 年間負担は4市町村で3.5億円
大阪府南部で1世紀近く路線バスを運行してきた金剛自動車(富田林市)が2023年12月、運転手不足を理由に廃業した。鹿児島をはじめ全国のバス事業者も同様の理由で減便や路線廃止が相次ぐ。事業撤退という異例の事態を地元はどのように受け止めたのか。同市の担当者らは「事業者との連携をもっと密にするべきだった」と振り返る。 【写真】〈関連〉金剛バスが運行していた4市町村を地図で確認する
7月末、近畿日本鉄道の富田林駅(同市)を訪れた。駅近くにあった金剛自動車本社は既に解体されていたが、バスターミナルには色とりどりのバスが行き来していた。地元の近鉄バスや南海バスに、自治体名が入るバスも。金剛バスが走っていた4市町村が設けた法定協議会運営の「金剛ふるさとバス」だ。 停留所で、重い買い物袋を持つ同市の山田節子さん(86)と出会った。「免許は返納してもうた。バスなしの生活は考えられへん」。代替バスの運行に安堵(あんど)した様子だったが、「便数は減り、年寄りはみんな買い物に苦労しているわ」と苦笑いを見せた。 ■ ■ ■ 金剛自動車は昨年9月、廃業を発表し12月で運行を終えた。ただ行政側には同5月、秘密裏に打診があった。「突然のことで衝撃的だった」と話すのは富田林市産業まちづくり部の北田寛人次長(52)。4市町村は財政支援を持ち出し事業継続を要請したが、同社の決意は固かったという。
4市町村は近鉄バスと南海バスに代替バスの協力を依頼し協議会を設置。運行していた15路線のうち、そもそも運休中だった2路線を廃止。9路線は協議会が運営主体となり継承し、残りは自治体のコミュニティーバスで補完した。 それでも、ふるさとバスの便数は金剛バスの7割ほど。減便に伴う利用者減は2割を見込む。運賃は踏襲したものの、4市町村の負担金は本年度だけで約3億5000万円が見込まれる。運営の早期見直しは避けられない課題となりそうだ。 ■ ■ ■ 廃業の主因となった運転手不足について、協議会関係者は、高齢化による退職者のほか、新型コロナウイルス禍からの需要回復で他社からの引き抜きもあったと証言する。廃業直前はバス31台に対し運転手は17人程度。人口減やコロナ禍も響き全路線が赤字だった。 前兆はなかったのか。市によると、金剛バスは撤退前の1年間で運転手不足を理由に2回減便した。23年初頭、補助金に関する相談があり協議を始めようとしたところ、廃業を打診された。北田次長は「密に連絡を取り合い早めに歩み寄っていれば、結果(廃業)は違っていたかもしれない」と悔やんだ。
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