【児童精神科医が解説】「なんでウチの子、こんなにヤル気がないのか…」普通に見える“境界知能の子”が感じる生きづらさ
● CASE2「行動が遅い子」 もしかして甘えている? 移動教室や遠足などで先生から「移動してね」「着替えてね」と声をかけられても、すぐに行動に移れない。そのため、集団行動で悪目立ちしてしまう子も少なくありません。 このような子に対して、「甘えているのかな?」などと考えがちですが、声をかけられてもすぐ行動できない子にはさまざまな背景が隠れています。 まず、ひとつ考えられる要因は「聞く力が弱い」という点です。たとえば、学校の先生が「国語の教科書の30ページを開いて、3番目の例文を読んでみましょう」と指示した場合、聞く力が弱い子だと「国語の教科書を開いて」という指示ぐらいしか聞き取れないことがあります。 その場合、情報が上手に理解できず、やるべきことに行動が移せなくなってしまいます。 また、不安が強い子や慎重な子は、新しい行動に慣れるまで時間がかかるので、それが要因になっている可能性もあります。その他、「集中力が途切れている」「わからないけれども恥ずかしいから質問できない」などの理由も考えられます。 すぐに行動に移らない子に対しては、まずは保護者がその様子を観察し、その背景に隠れている原因にはどんなものがあるのかを探っていくことを心掛けてください。
● 「行動が遅い子」の対応策 頭ごなしに注意するのは逆効果 子どもがすぐに行動しないからといって頭ごなしに注意すると子どもが不安で固まってしまうので、特性に合わせた対応策を取ることが肝心です。 たとえば、子どもにとって初めてのことや少し複雑なことを伝える場合は、できるだけゆっくりと丁寧に伝えることで、子ども側が行動の内容を理解する度合いがアップします。 言葉で理解するのが苦手な子の場合は、ビジュアルで理解してもらうためにイラストなどで説明するのもいいでしょう。 「今日は体操着を学校に持っていってほしい」という日であれば体操着のイラストを目につく場所に貼ると、記憶にも残りやすくなります。 また、行動に移れずにいる子どもの不安を減らしてあげるために、学校の先生にも保護者が把握している特性を事前に共有しておいてもらいましょう。保育園や幼稚園での様子や乳児期からの発達の様子なども伝えておくとなおいいです。 特性を伝えておけば、学校で子どもが何をしていいのか理解していなさそうなときは声かけをお願いしたり、黒板などにやるべきことを書いてもらって子どもが状況を随時確認できる環境をつくったりしてもらうなど、子どもの不安を減らす工夫を導入してもらえるはずです。