持ち直してきた米国株 このトレンドは続く? 予想PERからみる
下落が続いていた米国株が持ち直してきました。このトレンドは今後も続くのでしょうか。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】下落続く米国株 そもそもどれくらい割高なのか?
「まれ」な2標準偏差以上の下振れ
昨年12月から大幅な変動を伴いつつ下落してきた米国株が、ここへきてようやく反発してきました。代表的な株価指数であるS&P500は、12月24日から1月9日までの10営業日のうち8営業日が上昇し、直近のボトムから10%近く戻しました(1月10日現在)。VIX指数は19.98へと低下し、節目水準の20を割り込みました。同指数は恐怖指数とも呼ばれる先行き不透明感を示す指標ですから、その低下は市場参加者の不安心理が落ち着きつつあることを示しています。その他では原油価格が下げ止まり、低格付け社債の利回りも低下傾向にあるなど、広範な指標が金融市場の好転を示しています。 米国株下落については「行き過ぎでは?」との見方も多かったのですが、最も代表的なバリュエーション(企業価値評価)である予想PER(株価収益率)から判断しても、やはり売られ過ぎていた印象があります。予想PERは、分子が株価、分母が予想一株あたり利益で算出されますから、楽観(期待)が強いと上昇し、反対に悲観(警戒)が強いと低下する傾向があります。またPERが高い状態を割高、低い状態を割安と表現することが多いです。 それを踏まえた上で足もとの予想PERをみると、現在の値は直近60か月の平均から「2標準偏差」以上も下振れていることが分かります。平均から2標準偏差を超える低下は(統計的には)概ね5%以下の確率でしか発生しない事象ですので、かなり“まれな”ケースと言えます。実際、1995年以降でPERが2標準偏差以上の下振れを記録したのはITバブル崩壊、リーマンショック、欧州債務問題と米国債格下げなどが重なった2011年央の3回しかありません。 これらの局面と比べると、現在の方がマクロ環境は良く、さらなるPER低下には相当な悪材料が必要と思われますが、足もとでは12月雇用統計(1月4日発表)のように景気減速懸念を覆すマクロ指標が散見されているほか、米中貿易戦争で和解に向けた動きが一部でみられるなど明るい兆しもあります。したがって、これ以上のPER低下を伴った株価下落が長期化するとは想定しにくく、むしろ短期的にはPER上昇を伴って反発する可能性があると言えるでしょう。
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