フィギュアスケート「宙返り=バックフリップ」が解禁に! 前代未聞ルール変更のウラ事情を国際スケート連盟技術委員が解説…導入は五輪後、影響は?
アスリートファーストの視点をふまえた提案
「『ジャンプ要素は6つに削減、コレオスピンとコレオペアスピンを導入、コレオリフトは2026/27シーズンに導入』というパッケージについて、2026/27シーズンから導入する」 なぜこのようなパッケージ案を再提案することになったのか。 「それぞれの案に対して『内容的には歓迎する』という国が多い印象でした。しかし、『五輪まであと1年半の今ではなく、五輪後の採用のほうが良い』という意見が多く、アスリートファーストの視点もふまえ、このような提案になりました」 投票の結果は「賛成31、反対25、棄権1」。つまり導入が2026/27シーズン、五輪後となったことで、「今季の大改正は、なし」となった。 「個人的には、五輪の1年半前に大幅にルールを変えることは難しいという選手側の意向は、よく理解できます。一方で、今季から導入されていれば、今までにない新しい演技を五輪で見られたかも知れないという思いもあります。全体的な状況を踏まえての決着点だったと信じています」 選手にとっては、いずれにしても混乱があった。採択されると思い、ジャンプ6つのプログラムを作っていた選手や、コレオスピンを開発しようと試行錯誤していた選手、オイラーを挟んだ新しいジャンプに取り組んでいた選手もいる。導入が2年後となったことで、すべてを昨季までと同様に戻さなければならない。
今季から導入が決定していれば…
一方、もし今季からの導入が決定していれば、シーズンインまで1か月しかない状況で新しい内容に挑むのは、もっと負担が大きかっただろう。また五輪までを「4年計画」で考えていたチームにとっては、目標の再設定も必要になる。実際のところ、選手やコーチ達からは「五輪1年半前での改正は、これまで積み上げてきたモノが白紙になる」という意見が多く聞こえていた。 混乱する状況のなか、総会の最中に「2年後の導入」という再提案を出したことは、ISUや技術委員会としては賢明な判断だったと言える。まずはミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に向けて、選手たちがストレスなく、それぞれの持ち味を存分に発揮して欲しい。二転三転はあったものの、最終的には選手にとってプラスの判断がなされた、今回の総会だったと感じた。 岡部さんはこう話す。 「私達の役割は、ルールを通して、フィギュアスケートをより魅力的なスポーツへと進化させるお手伝いです。前代未聞の総会となりましたが、いずれにしても2年後にルールは変更されます。スポーツとして進化すると同時に、素晴らしい演技が生まれると心から信じています」
(「フィギュアスケートPRESS」野口美惠 = 文)
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