AIは弁護士から仕事を奪うのか? 「AI法律相談」のすすめ
5. 相続を事例に、AIの影響を受けない弁護士業務を考察
相続の場合でも同じことが言え、AIでは対応できず、弁護士しかできない業務があります。 5-1. 介護や生前贈与をめぐる事実認識の相違 事実の認識についての争いは相続でもあり、「親の生前、私のほうが介護など親の面倒を見ていたのか」とか、「兄は、私よりも多く生前贈与を受けていたはずだ」というようなケースがよくあります。 このような争いが生じた場合はAIで解決することは困難です。何が真実か証拠を揃えて適切な主張をするということはAIには難しく、弁護士の出番ということになります。 5-2. 頻繁にある相続に関するルール改正 相続に関する法律も頻繁ではありませんが改正されます。 例えば、2024年4月からは不動産登記法の改正により、相続登記が義務化されました。また生前贈与のルールも、2024年1月から変更されています。 改正後しばらくすればAIが学習するのに十分なコンテンツが蓄積されますが、それまではやはりAIは改正法を無視した間違った回答をする可能性があります。 AIの回答が本当に正しいのかという点については常に疑いの目を持っておくことが無難といえます。 5-3. 相続争いへの対応 相続のトラブルは親戚同士での争いになります。 すでに昔から仲が悪かったから話したくないという人もいますが、相続をきっかけに仲が悪くなってしまったという人もいます。 いずれにせよ人間関係がこじれた相手とは直接話をしたくないものですし、話し合ったところでお互い感情的になっているので合意を得ることは困難です。 そこで弁護士に依頼をすれば相手方とのやりとりをすべて任せることができます。この弁護士の代理人としての業務は、AIが取って代わることはできません。また、相続の悩みを人間である弁護士に聞いてもらうだけでも安心できるでしょう。
6. 弁護士がAIを活用する時代に
以上見てきたように、AIが進化すれば、紛争自体が減る可能性がありますし、紛争を弁護士に依頼しなくても自分で解決できるという人も増えてくる可能性があります。 しかし、AIの進化は弁護士にとっても法律に関する調査や書類の作成を効率化するという点で役に立つものです。 AI時代の弁護士の付加価値は、次の3つの能力によって生み出されるでしょう。 ・争いのある事実についての主張立証 ・未知の領域への対応 ・コミュニケーションや交渉 弁護士は調べものや書類作成などについてはAIを活用しつつ、付加価値を生み出せる項目に全力で取り組むべきだと言えます。