AIは弁護士から仕事を奪うのか? 「AI法律相談」のすすめ
3. 相続を事例に、AIによって減少する弁護士業務を考察
弁護士が扱うテーマの一つである相続について、AIが与える影響について具体的に検討してみます。 遺産の分け方について話し合う「遺産分割協議」は、簡単に言えば以下のような流れを辿ります。カッコ書きにはその際に作成する主な書類を記載しています。 ①相続人の調査、確定(家系図などの作成) ②遺産の調査、遺産の範囲の確定(遺産目録の作成) ③遺産分割の交渉(交渉文面や遺産分割協議書の作成) ④遺産分割調停や訴訟(調停申立書や訴状の作成) ⑤遺産の分配(預貯金・有価証券の解約や不動産登記の書類作成) それぞれについて、どのような影響があるのか解説します。 3-1. 相続人の調査、確定(家系図などの作成) 遺産分割するには、そもそも誰がその遺産を相続する権利があるのかを調査し、確定する必要があります。 これについては、もともと弁護士が行わなくても、本人が役所の戸籍課で行った方が早い作業ではあります。今後は戸籍を読み込ませれば自動的に家系図が出来上がるようなAIも出てくるかもしれませんね。 3-2. 遺産の調査、遺産の範囲の確定(遺産目録の作成) 次に亡くなった人の遺産について、しっかりと調べる必要があります。 預貯金や不動産など、亡くなった人の遺産をExcelのような表計算ツールにまとめて一覧化するということが多いです。 こちらもAIでやるというほどの作業ではないですが、今後は預貯金の残高証明書や不動産の登記簿を読み込ませれば自動的に遺産目録が出来上がるというようなAIが出てくるかもしれません。 3-3. 遺産分割の交渉(交渉文面や遺産分割協議書の作成) 相続人全員で、遺産を誰にどのように分けるか話し合い、その合意内容を遺産分割協議書という書類にまとめます。 交渉の文面や遺産分割協議書を生成AIを使って作成することが、今後ありえると思います。 また、交渉の過程での法律に関する調査においてもAIが活用されるでしょう。すでに書類のテンプレートは世の中に出回っていますが、生成AIはそれを個別の具体的な事案に当てはめてカスタマイズしてくれるはずです。 これにより弁護士の仕事は減るかもしれませんし、楽にもなるかもしれません。 3-4. 遺産分割調停や訴訟(調停申立書や訴状の作成) 遺産分割の話し合いが決裂した場合、裁判所の調停や訴訟に進んでしまうことがあります。申立手続きや自分の主張の説明など、一般の人が自分で対処するのは難しい面もあるので、弁護士がサポートすることが多くなっています。 ただし、調停申立書や訴状の作成についても、生成AIで作れるようになっていくでしょう。調停や裁判の手続きの流れについてもAIが教えてくれると思います。そうすると「弁護士の仕事って何?」となってきますが、それについては後述することにします。 3-5. 遺産の分配(預貯金・有価証券の解約や相続登記の書類作成) 遺産分割協議が無事に終了しても、預貯金を解約するための書類の作成が面倒であったり、相続登記(相続した不動産の名義変更)の手続きを司法書士にお願いしたり、最後の最後まで気が抜けません。 書類は金融機関ごとに指定をされるので、金融機関主導でのAIによる効率化・便利化を期待したいところです。 以上見てきたところでは、やはりAIにより書類を作成したり、法令や手続きを調べたりという点で弁護士の仕事は確実に減ることが予想されます。 しかし、かと言って弁護士の仕事がなくなるかというとそうではありません。次に、どのような仕事がなくならないかを見ていきましょう。