AIは弁護士から仕事を奪うのか? 「AI法律相談」のすすめ
4. AIでもなくならない弁護士業務
どれだけAIが進化をしても、主に以下の3つの場合については弁護士が必要とされ、弁護士の腕の見せ所になるでしょう。 ・事実の認識について争いがある場合 ・未知の領域を扱う場合 ・対人コミュニケーションが重要な場合 それぞれについて解説します。 4-1. 事実の認識について争いがある場合 現在の生成AIは、「プロンプト」と言って、文章でAIに指示を与えたり質問をしたりする必要があります。 法的なトラブルがあった際に、AさんとBさんで事実に関する認識が同じなら、AさんもBさんも同じ内容のプロンプトでAIに質問をすれば、AIが同じ回答をする可能性が高いです。そうすればAさんもBさんも納得をして、弁護士を入れたり裁判をしたりするという可能性は低くなります。 しかし、AさんとBさんとで事実認識が異なる場合、AさんとBさんは全く違うプロンプトでAIに質問することになります。 そうすると、AIはAさんに対しては「Aさんが正しい」と言い、Bさんには「Bさんが正しい」と回答してしまう可能性が高いです。こうなると、AさんもBさんも自分が正しいと思っていて「相手が悪い」となり、これ以上AIは役には立たず、結局は弁護士沙汰、裁判沙汰となります。 このように、事実の認識について争いがある場合は、弁護士の仕事はなくならず、弁護士は事実に関する主張立証の技術や経験を磨くことが高い付加価値になります。 4-2. 未知の領域を扱う場合 AIは基本的にすでにあるコンテンツから学習をしますので、学習材料のない未知の領域については弱いです。 法解釈や法的三段論法というのはある程度一般化でき、未知の領域にも応用できる可能性はあるものの、新しく制定された法律や、新しいビジネスや言葉が出てくる中で完璧な答えを出すのは非常に難しいでしょう。 したがって、未知の領域はAIではなく弁護士の出番ということになります。弁護士としては未知の領域をAIよりも先に学習する必要がありますが、それが弁護士の大きな付加価値になるでしょう。 4-3. 対人コミュニケーションや交渉が重要な場合 よくAIでなくならない仕事の例として、スナックの店員さんが挙げられます。どれだけ便利な社会になっても、人とのコミュニケーションはAIでは務まらない大きな価値があると言われています。 逆に、法的トラブルを抱える方にとっては、相手方と「直接コミュニケーションを取りたくない」「誰かに代わりにやりとりしてほしい」というニーズがあります。 したがって、弁護士としては、まずは相談者とのコミュニケーションを大事にし、AIでは与えられない安心感や信頼を与えることに価値があります。また、弁護士が代理人として相手方との交渉を担当し、相談者・依頼者の方の負担をなくすということに価値があります。 これらはAIがどれだけ進化してもなくならない弁護士の価値です。