AIは弁護士から仕事を奪うのか? 「AI法律相談」のすすめ
AI(人工知能)が急速に進化、普及するなかで、弁護士のような士業にも大きな影響を与えると言われています。弁護士業務での活用事例や、一般向けのAI法律相談の可能性などについて、ネクスパート法律事務所代表弁護士の寺垣俊介さんが考察します。
1. 弁護士の筆者も検索エンジンからAIに移行
弁護士である私も最近はGoogleのような検索エンジンで検索することをやめ、調べ物はまず生成AIを活用しています。 法律に関する調査は、最後は法令の条文、過去の裁判例などが拠り所となりますが、まず最初に生成AIを使うことで道筋を立てるのがスムーズになりました。 また、相談者の方が事前に生成AIで調べてきていることも増えましたので、私としてもAIだとどのような回答をするのか、ということは一応チェックしておきたいというのもあります。 生成AIで弁護士の仕事がなくなると言う人もいますし、弁護士の仕事が効率化されてさらに広がると言う人もいます。いずれも正解だと思います。 弁護士業務や法律相談に、AIがどのような影響を与えうるのか。現時点での私の考えを紹介します。
2. AIにより減る弁護士業務とは
書類作成や、法律に関する調査などAIの得意分野については、弁護士業務が減っていくでしょう。 2-1. 書類の作成はAIで すでに生成AIで契約書を作成するという方は増えてきています。 例えば、業務委託契約書を作成したいというときに、その業務内容や自分の立場、その他諸条件をプロンプト(AIへの指示)を入力すれば契約書ができあがります。 また、できあがった契約書を自分に有利な内容になるように修正したり、中立にしたり、選択肢を示してもらうなど、様々な使い方があります。 弁護士資格のない方でも使い方を極めれば、それなりの契約書を作成したりレビューしたりすることができるようになります。そうなれば、契約書の作成を弁護士に依頼する必要性は減少するでしょう。弁護士の業務は、AIが制作した契約書を最終チェックすることとなるかもしれません。 2-2. 調査や質問をAIで 法的トラブルが減る可能性 法律に関する調査や質問をAIにするという人も増えています。 Google検索でももちろん調べることはできますが、自分の事案にピッタリ合った事案が見つかることは稀です。 生成AIであれば、まだそれほど精度は高くないものの、具体的な事案に対する質問にも回答をしてくれます。 この制度が上がれば上がるほど弁護士の仕事は減る可能性がありますし、効率化されてさらに広がる可能性も秘めています。 もっとも当面の間は、生成AIの回答が正しいのかどうかの最終的な判断はやはり弁護士がする、ということになるのではないかと思います。 ただ、アメリカでは司法試験に受かるようなAIも出てきています。法律に関する調査はAIで完璧にできて、「弁護士はいらない」という時代がくるかもしれません。 例えば、AさんとBさんが法的なトラブルになっていたとして、AさんとBさんがそれぞれAIに質問をして同じ回答が出た場合、AさんもBさんも納得して問題を解決し、弁護士や裁判所が不要という世界になるかもしれません。 これにより、法的なトラブル、紛争自体が減る可能性があります。