荻野目洋子も参戦…カジュアルおばさん&ロックTおばさんを笑うな!「おば揶揄」が炎上するワケ
みんなで「おばさん」の仕事を分け合っていく時代
しかしそれはミソジニーの投影ではないか。 彼女たちが家庭にいなければ、高度経済成長やバブル期の会社員や工場労働者・建築現場などでの長時間労働は成り立たなかっただろう。朝ドラ『虎に翼』に出てくる花江のような存在だ。彼女なくして主人公・寅子の外での活躍もありえない。はる亡きあと、家事を一手に引き受けて、人知れず花江は疲労を蓄積させていく……。 昨今、専業主婦はおとしめられやすい存在だが、保育園の不足していた時代に生まれた0~3歳児を安全に見守り、育てたのは彼女たちだ。介護保険制度が始まる以前の認知症の高齢者のお世話をしてきたのも、彼女たちである。 それらのケア労働はただ金銭に換算されてこなかっただけで、確実に社会を下支えしてきた。現在、日本の介護給付費は年間13兆円。家庭内でまかなわれていたときはすべてが無償だった。その労働は「存在しなかった」のではなく「計上されず、透明化されていた」のだ。 いま、完全なる少子高齢社会が実現し、円安・賃金安のためにアジアからの技能実習生という名の移民すら減りつつある。ここにきて「ケアの支え手」の不足を痛感し、「おばさん」のありがたみを社会が自覚するタイミングとなったのだろう。「おばさん」だっていつまでもいてくれるわけではない。みんなで「おばさん」の仕事を理解し、分解し、シェアしていく。そんな時代がきているのだ。
藤井 セイラ(編集者・エッセイスト)