荻野目洋子も参戦…カジュアルおばさん&ロックTおばさんを笑うな!「おば揶揄」が炎上するワケ
「ケア労働のありがたみ」に気づく
今回、「カジュアルおばさん」という言葉に多くの人が反応したのは、そういうことではないのか。「自分の生活を下支えしてくれているケア労働の担い手=おばさん」を下に見てバカにしていい、という思春期仕草はもうやめなきゃいけない、と考える人が増えているのだ。特に女性は、年齢が上がるほどにその社会構造に直面させられて連帯するから、自然と気がつく。 また非婚率の上がっていく現代社会では、最終的にケアの担い手が自分自身になり、「セルフケア」を求められるようになる。すると自分で掃除、洗濯、買い物、食事、ゴミ出し、健康管理などのケア一式をやってみたそのときに、自分が子どものときからこれまで受けてきた「おばさん」からのケアの手厚さ、配慮に初めて気がつくのだ。 おそらくその「ケア労働のありがたみ」に気がつく機会を持たずに歳をとってしまった高齢男性が、窓口で女性従業員に怒鳴り散らし、カスハラやモンスタークレーマーとして問題化しているのではないか、とも思う。
ジブリの描く女性のライフステージ
最後に、角野栄子原作のジブリ映画「魔女の宅急便」を思い出してほしい。あれに出てくるキャラクターたちは、見事に「女性の各ライフステージ」を表現している。 10代 性成熟もまだで、アイデンティティの確立に悩むキキ。 20代 やりたいこと(美術)を見つけ、仕事に邁進するウルスラ。 30代~40代 結婚し、仕事(パン屋)も軌道に乗ったところで妊娠・出産を迎え、カラダと時間の自由度が激減するが、地域のつながりのハブとしても期待される、おソノさん。 50代~60代 子育てをやり終え、自分の仕事(魔法を使った薬づくり)をさらに究め、地域の人々に貢献し、金銭労働とやりがいを両立させる、キキのお母さん。 70代~80代 高齢となり、裕福であれば「ニシンのパイ」の銀髪の老婦人となり、そうではなく人に使われる側なら、その家のヘルパーや家政婦となる。社会階層や資産で道が分かれる。 おそらくこの中でいちばん肩に荷物をたくさん載せているのが、30代~40代のパン屋のおソノさんだ。忙しい。体力はいつもギリギリだが、なんとか回せてしまう。そしてこの世代の女性は、先ほど挙げた、「オバタリアン」や「わたしンち」のお母さんのように、なぜだか「バカにしてもよい表象」として長らく扱われがちだった。