糸魚川大火 高齢世帯多く、のしかかるがれき撤去や住宅再建
新潟県糸魚川市(人口約4万5000人)で12月22日発生した大火は、市の「駅北大火対策本部」の26日までの調べで焼失面積約4万平方メートル、被害家屋約150棟などが明らかになりました。焼け跡が広がる市街地は戦災を思わせるような光景。全国からふるさと納税などの支援も始まっているものの、がれきの撤去や住宅の再建などのしかかる重い負担に被災者は戸惑うばかりです。
「信じられない」つぶやく
冷たい雨になった27日、被災地ではがれきの撤去のための調査や下準備が続き、市民の姿もまばら。交通が確保された幹線に車が行き交い、警察のパトカーが巡回していました。がれきの山となった市街地を歩いていた中年女性は「こんなこと信じられない」と自らに言い聞かせるように何度もつぶやいていました。 JR糸魚川駅のすぐ北側の大町1丁目の飲食店から出火した火の手は南風にあおられて市街地の北側と東側に拡大。対策本部によると、22日午前10時20分の出火を同28分覚知、同日午後8時50分にまだ煙は出ているものの延焼の恐れがなくなったとして「鎮圧」を宣言。翌23日午後4時30分になってやっと「鎮火」となりました。 27日午後、焼け跡を見守っていた駅前に住む木浦稔則(としのり)さん(62)は、「火元の飲食店の2軒南側の自宅にいて出火に遭遇した」と説明。「警察、消防に家から出るようにと避難を促され、近くの駐車場で様子を見守った」。 木浦さんによると、火の手は渦巻くように東の方向に延びたかと思うと北側にも広がり「火勢を強めていった」。自宅は焼けなかったが、市街地の建物がなくなってしまったため「海から吹き付ける強い北風が私の古い住宅にもろに当たるので、その寒さがつらい」と表情を曇らせました。
「家を借りて」言葉少な
同市東部の寺町に住んでいて被災を免れたという主婦(70)は「最初は近所の皆で火災と消火活動を見守っていたが、そのうち強風のため火の手がどんどん広がった。犠牲者が出なかったことは不幸中の幸い。これから皆で支え合って復興していかないと」と話していました。 目の前に日本海が見える延焼地域では、自宅の焼け跡に無事な品物を探しに来た女性が、焼け残った小さな物置から袋を取り出し、さらにがれきの山によじ登って探し物をしていました。「家を借りて住んでいるんです」と言葉少なに今の境遇を話しました。 家や財産を失った市民の多くは、家の再建の前にまずがれきの処理が問題。その費用負担も大きいと見られ、負担の方法などが論議になっています。高齢世帯も多く、地域の再生に向けて市民と市の取り組みは苦難を伴うことになりそうです。