袴田事件当時の捜査に対するこれだけの疑問 小川秀世[袴田事件主任弁護人]
捏造が一つでもあれば再審無罪にすべき
《袴田さんの事件がここまで長くなったことについてですが、本当に58年という長さ。私も弁護士になり立てのときから40年、ずっと袴田事件弁護団に入れていただいてきました。 ここまで長期化した原因は、もちろん証拠開示のことなども大きいのですけれども、私は、やはり捏造が1つでも出てきたら、もうこれは再審開始無罪にしなければいけないと思っています。捏造が1つ行われていたら、他でも捏造が行われているんですよ。捏造の部分に関して警察官が法廷で証言したって、必ず嘘をつくのです。 そうしたら判断するのがものすごく難しくなります。だから1つでも捏造がはっきり出たら、それだけで無罪にしなければいけません。 それは証拠隠しでも同じです。証拠開示をしなかったことは、今の時代、皆さんもおかしいと思うでしょう。証拠隠しをしたことがわかったら、その段階でもう再審開始無罪としなければいけない。そうしないと、こういう冤罪はなかなかなくならないと思います。 最後に1つだけ。「畝本検事総長の談話」(10月8日付)、どういうことですか。この判決は客観的な証拠にも矛盾しているとか、さんざん判決の悪口を言ったうえで、だから本来は控訴をすべきだったと言っている。これは、袴田さんが犯人だと言っていることと同じでしょう。袴田さんはもう無罪が確定したわけです。その人に対して、犯人だというのは法律家だったら許されない、名誉棄損だということはわかっているはずです。よく無罪と無実は違うと言う人がいますが、裁判は無実かどうかを判断している場ではないんですね。無罪かどうかだけなのです。裁判で無罪になったら、もう無罪と扱われなければいけない。それをこの人は、「まだ犯人だと思っている」と。とんでもないですよね。》