袴田事件当時の捜査に対するこれだけの疑問 小川秀世[袴田事件主任弁護人]
捜査の問題点と真犯人についての類推
《問題は捜査機関です。ここでスライドをお見せしながら説明したいと思います。 これは専務のFさんの傷の位置です。赤丸で書いてあるところが傷の位置です。これを見て、おかしいと思うでしょう。傷の位置がまとまっています。専務さんは、柔道2段で屈強な方でした。この方が強盗に襲われたら、争いますよね。争ったときに、ここまで同じところに、しかも全部、切り傷ではなくて浅い刺し傷ができるというのはどう考えてもおかしい。 さらに場所から分かるように、すべて心臓は外れています。顔にもあります。これを見て、私は、もう身体を拘束されたFさんが、犯人に刺されたとしか考えられないと思っています。 これは今回、裁判でも主張しましたが、重要なことなんです。16カ所も刺している。4人を殺さなければいけない時に、1人に16回も刺していたら、他の人が逃げてしまうではないですか。ですからもうこれは、身体を拘束された状態で刺された傷であると。苦しめるための傷なのだと理解するしかないと思っています。だからこの事件は、端的に言って強盗ではないのです。 そしてご遺体の写真が出ますけれども、Cさんの写真の太もものところに縄のように見える何かが写っています。これが何だったのか知りたいと思ったら、泥をはらって綺麗にして、どういう状態の、どういうものがあったのか調べるでしょう。ところが、そういう写真は一切ないんです。この次の写真は、もう全て裸にした写真だけなんです。綺麗に洗ったような写真しかない。 他にもおかしいところはいくつもあるんですけれども、少なくともCさんに関しては、紐あるいはベルトのようなものがあり、拘束された痕なのではないかというのが私の意見です。
怨恨による殺人を強盗にすり替えた
Mさんの写真には、もっとはっきりと紐あるいはベルトのようなものが写っています。Mさんはズボンは履いていません。ですからベルトをしていること自体がおかしい。だからベルトではないと私は思っているんです。Cさんの胸のところにもありますでしょう。太もものところには、紐を通す穴のある杭のようなものがある(写真参照)。 このカラー写真は証拠開示で初めて出てきました。現場のカラー写真があったことを初めて知りました。それまでは隠されていたんですね。さらに、もっと撮っているに決まっているのに、カラー写真は1枚しか出てこないのです。 次女のH子さんの写真でも、太もものところに、なにか写っています。これは何なのか、誰だって明らかにしたいと思うでしょう。ところが、そういうことを明らかにした写真や記述は一切なくて、明らかに最初から隠しているんです。 私はもう間違いなく、全員拘束されていたと考えています。拘束されておらず、1人で4人を短い刃物で殺していったら、声も叫び声も聞こえるでしょうし、逃げる人もいるでしょう。しかしそんなことは一切なく、両隣には、人一人が通れる隙間もないほど接近したおうちがありましたが、そこに住んでいる人たちは、一切物音を聞いていないのです。 その意味では、私は、この事件はもう最初から警察は怨恨による殺人だということをわかっていながら、強盗にすり替えてしまったのだと思っています。なぜそんなことをするのかというと、私は真犯人を警察が知っていたからだと思っています。私のところにはいろんなことを言ってくれる人がいるんです。実はあの人が真犯人ではないかという情報もありました。そういう情報からしても、犯人は反社の人であり、警察がそれを隠そうとしたのではないかと私は思っています。》