「異動先でうまくいかない」から“転職”はアリ? プロが「もったいない」と指摘する理由
多くの企業では、4月と10月に人事異動があります。4月に人事異動があった人の中には、「異動先の業務が気に入らない」「異動先で仕事がうまくいかない」などの理由で悩んでいる人もいるのではないでしょうか。SNS上では「4月に異動してから、仕事がうまくいかない」「異動してから仕事にやりがいがなく、転職したい」「異動先になじめない」という内容の声が上がっています。 【すごい】「えっ…全然違う…!」 これが「退職願・退職届・辞表」の違いです! もし新しい組織や職場で不満が解消されない状況や、仕事がうまくいかない状況が続いた場合、転職を視野に入れても問題はないのでしょうか。企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた、人事コンサルティング会社「人材研究所」の曽和利光代表が解説します。
異動先に慣れるまでに半年以上かかる
異動先で仕事がうまくいかないことを理由に転職を検討する件については、「早まらないで!」というのが私の結論です。なぜなら、どんな人でも新しい組織や職場になじむのに半年程度はかかるものだからです。 ある研究によると、まず職場の上司や仲間に受け入れられたという「受容感」、もしくは最近、流行している「心理的安全性」のようなものを得るには、平均で3カ月はかかるとされています。 毎年、話題になる「5月病」(近年は6月病も登場)というのは、受容感や心理的安全性を得るのに失敗した状態といえるかもしれません。人と人が理解し合って、自分を受け入れてもらった、仲間に入れてもらえたと感じるまでには、それぐらいの時間がかかるということです。 さらに次の壁があります。それは、ここで何とかやっていけそうだという「有能感」、または、達成できそうな気がする気持ちである「自己効力感」です。これらを得るためには、受容感を得てからさらに3カ月、つまり新しい職場に来てから半年くらいはかかるというのです。 受容感を得ることで、「この職場のために働こう」というモチベーションが生まれますし、職場でうまくやっていくための不文律、つまり明文化されていない暗黙のルールを周囲に安心して尋ねることができるようになります。そうすることで、職場における効果的な立ち居振る舞いや組織の動かし方が分かるようになり、「やっていけそう」となるわけです。