「異動先でうまくいかない」から“転職”はアリ? プロが「もったいない」と指摘する理由
異動後の半年間は「様子見」の期間
このような現象はさまざまな企業で実際に生じているため、経験則的に「新入社員・転職者・異動者は、半年は大目にみる」としている企業は、多く存在します。例えば、「評価をつけない」もしくは「評価をつけても、基本的には標準評価とみなす」などのような人事制度を導入している企業があります。 また、半年程度、指導や助言をする人である「メンター」を新入社員や異動者などに配置し、定期的に1対1のミーティングを行って、悩み相談を実施しているところもあります。このほか、人事異動後、半年以内は問題が起こりやすい期間のため、企業の人事担当者や幹部が様子を把握するための面談を実施したり、異動後にアンケートや調査などを実施したりすることもあります。
異動者に対しては新卒社員のようなフォローが少ない
異動後、3カ月もたたないうちに、「自分はこの組織にはなじめない」「自分はここではやっていけない」などと思うのは早計かもしれません。それくらいの期間であれば、違和感があるというのは、極めて普通のことなのです。 違和感が生じているのは、相互理解を行って、不文律を知って、組織の扱い方が分かるまでのプロセスを経ている途中だからです。このプロセスをすっ飛ばして、いきなり仕事ができるほど、組織の中で働くことは甘くはありません。 新卒入社の人の場合、部署に配属されてから一定の期間は、企業が手取り足取りフォローしてくれたかもしれません。ただ、異動者に対してはそこまで手を回してくれないのが現状で、異動した人は、戸惑うケースが多いのかもしれません。本来であれば、企業は異動者に対しても何らかのフォローをすべきだと思います。
「相互理解」と「不文律の理解」が重要
ですから、もしまだ新しい職場で違和感があるのであれば、最初に確認すべきことは、「新しい上司や同僚のことをどれだけ理解したか」「自分のことをどれだけ理解してもらったか」「理解してもらうためにどの程度、コミュニケーションを取ったか」です。 そして、相互理解ができているということであれば、次に確認すべきは、出来上がった関係性を利用して、職場にある不文律について教えてもらったか、聞いているかということです。これらのことができていなければ、どんなに有能な人であっても、チームワークが基本である仕事において、なかなか持てる力を発揮できないことでしょう。
どうしても違和感が残るなら転職もあり得るが…
もしすでに上司と同僚のことを理解しつつ、相手に自分のことを分かってもらい、職場の不文律についても分かった上で違和感を持っているのであれば、ようやく転職を視野に入れてもよいのかもしれません。 明らかに確認した上で、「自分の考えとは違う」「相性が合わない」ということであれば、それでも慎重にすべきとは思いますが、職場を変えるために転職することもやむを得ないでしょう。 しかし、本当は現在の職場にフィットしているかもしれないのに、相互理解と不文律の理解ができていなかったばかりに、職場を飛び出してしまうのはもったいないことです。ぜひこれまでの状況を振り返ってみてください。
人材研究所代表 曽和利光