【性感染症】感染拡大が止まらない! 身を守るためにできること
感染経路は「濃厚な性的接触」。キスやオーラルでも感染リスクが
編:梅毒が“偽装の達人”と呼ばれるのは、その気づきにくさに由来するのですね。「感染してしまったかも」と気づくことができるように、感染経路と症状についても教えてください。 高:梅毒は、梅毒菌が口や性器などの粘膜や皮膚の小さな傷口から体内に入り込むことにより感染するため、濃厚な性的接触が主な感染経路になります。ノーマルセックスだけでなく、オーラルセックスやアナルセックス、キス、顔射(射精した精液を顔などにかけること)などでも感染し、眼、口腔、咽頭、陰部、消化管、肛門などいろいろな部位に発生します。 次に症状の特徴ですが、梅毒に感染すると3~4週間ぐらいで、性器や口などの感染部位に「しこり」や「くぼみ(潰瘍)」ができます。しかしそのまま放置すると3週間ぐらいで症状が消える。そして1~3ヶ月後に発疹、発熱などの症状が再び現れるのです。症状が治まったとしても、梅毒は進行性の病気なので自然に治癒することはありません。
Q. 梅毒に感染したら、症状はどう進行する?
梅毒の感染は大きく3つの期間に分けられます。典型的な症状が現れない場合もあります。 <早期梅毒> 感染から1年未満、感染力が強い 【第1期】 感染から1ヶ月前後(遅くとも3ヶ月以内)の時期。感染部位(性器、肛門、口など)にできもの、しこり、潰瘍、鼠径部のリンパ節の腫れなどが生じる。通常は痛み、かゆみなどはない。症状は時間の経過とともに自然に消える。 【第2期】 無治療で1~3ヶ月経過した時期。手や足・全身にバラ疹(ばらしん)とよばれるピンク~赤色の発疹、口の中の粘膜に白っぽい斑紋、発熱や倦怠感など。発疹は数週間~数ヶ月で消える。無治療のまま放置すると後期梅毒に移行。 <後期梅毒> 感染後数年から数十年の期間。感染から1年以上経過すると性的接触での感染力はないとされている 【第3期】 感染から3年以上経過した時期。心血管症状、皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍、進行麻痺、脊髄癆など、さまざまな臓器障害が生じる。 ※梅毒は比較的早期での発見・治療開始ができるようになり深刻な状態にまで進行するケースは少なくなっている 編:女性が梅毒に感染すると、妊娠出産にも影響するという話を聞きました。女性と男性で身体への影響に違いがあるのでしょうか? 高:女性の場合、病原体が腟から子宮や卵管の中に侵入し、腹腔内にばらまかれてしまう可能性があります。一方、男性は性器に感染してもお腹の中までは病原体が入りません。そういう意味では、梅毒に限らず性感染症による影響は女性の方がより深刻なのです。 そして、妊娠中の女性が梅毒感染すると胎児にも感染させてしまうことがあり、死産や早産になったり、生まれてくる子の神経や脳に異常をきたす先天梅毒が起きたりします。妊娠中に感染がわかった場合には、母子感染のリスクを下げるためにも適切な治療を受けましょう。ちなみに日本では妊婦健診で梅毒の検査を必ず行います。ただ、このとき陰性だったのに、出産したら赤ちゃんが先天梅毒だったというケースが稀にあります。妊娠中期と後期には梅毒検査を行わないので、妊娠中の性行為で感染すると発見に至らず、出産まで放置されてしまいかねないのです。