【性感染症】感染拡大が止まらない! 身を守るためにできること
性感染症は、性体験がある人なら誰もがかかり得る病気。けれど普段意識しているかというと、そこまでリアリティを感じていないという人も多いのでは? しかし、油断は禁物。日本ではここ10年ほどの間に「梅毒」が増え続けている。昨年は過去最高の報告数となり、2023年はそれを上回るペースで増加中。もはや梅毒は見過ごせない性感染症の1つに。 「感染のリスクはどんなところに?」「予防法は?」「もしかかってしまったら?」など、身を守るために知っておきたいことはたくさん。そこで、産婦人科医の高橋幸子先生に性感染症にまつわる気になるあれこれを徹底取材。自分も大切な人も守る“セーファーセックス”を実践するためのヒントも必見! 【写真】性感染症から身を守るためにできること 【産婦人科医 高橋幸子先生】 「サッコ先生」の愛称で親しまれ、全国の小中学校・高校で年間160回もの性教育の講演を行う産婦人科医。埼玉医科大学 医療人育成支援センター・地域医学推進センター助教、埼玉医科大学医学教育センター、埼玉医科大学病 院産婦人科助教を兼任。日本家族計画協会クリニック非常勤医師。一般社団法人 彩の国思春期研究会代表理事。
梅毒の感染者数が急増、一体何が起きている?
そもそも梅毒とは「梅毒トレポネーマ(以下梅毒菌)」という細菌による感染症。この感染拡大の背景には、何があるのだろう。 編集部(以下、編):感染者数の推移を見ると、長い間梅毒は年間500件ほどに抑えられていました。しかし近年は増加傾向が止まらず、今年は既に11,256件※と前年を上回るペース。なぜ梅毒がこれほど増えているのでしょうか? 高橋先生(以下、高):はっきりとした原因を特定するのは難しいのですが、これまでは海外から持ち込まれたというインバウンド説や、パパ活や性風俗営業を通じて感染が広がってきたといった分析がなされてきました。また昨年から急増している背景として、SNSやマッチングアプリを介した出会いが増えていることが指摘されています。性風俗を利用する人からの感染ルートがあるのは確かでしょうが、それだけではなく不特定の人とカジュアルに性的関係を持つ人が増えた。それが、おそらく一般に広がっている要因の1つだと思います。 編:実際に医療現場では、梅毒が増えている実感はありますか? 高:はい、現場でも増えている印象はありますね。クラミジアや性器ヘルペスなどの他の性感染症も少しずつ増加傾向にあるように思います。例えば性器ヘルぺスは、最初の感染時には痛みが強いので「病院へ行こう」という行動につながりやすい。でも梅毒は痛みもなく、症状が軽くなったり消えたりする時期があるため、感染したことに気づかないケースや、「症状が治まったから完治した」と勘違いして治療が遅れてしまうケースがあり、感染拡大につながりやすいのです。 ※:国立感染症研究所 2023年10月18日発表資料より