足先の「冷え」から病気が見つかるケースはあるのか?【日本版「足病医」が足のトラブル解決】
【日本版「足病医」が足のトラブル解決】 急激に冷え込むこの季節、「足先の冷え」に悩まされる人は多いでしょう。その大きな原因とされるのが、血流の低下です。 足の血管まで診てもらうには「足の専門外来」を選ぶ 本来、血液は心臓のポンプ機能によって全身の器官や組織を循環しています。ところが足は心臓から最も離れた位置にあり、ほかの部位に比べて血液の巡りが悪くなりやすい。 しかも、座りっぱなしなどでふくらはぎの筋肉が衰えると、血液を心臓に送り戻すポンプ機能が十分に発揮されません。下半身の血流が停滞すると、足がむくんで冷えを起こす原因の一つになります。 ほかにも、急激な気温の変化による冷えもあります。寒い場所を訪れると鼻がキンキンに冷えるのと同じく、一時的に血管が異常収縮する「攣縮」が起こると、皮膚の表面に張り巡らされる毛細血管の血行が悪くなり、末端が冷たくなるのです。 一方で単なる“冷え性”だと思っていたら、背後に重大な病気が隠れているケースも少なくありません。その一つが「閉塞性動脈硬化症(ASO)」です。 動脈硬化の進行によって末梢の血管が詰まったり、血流が悪くなる病気で、手足のしびれや冷えのほか、歩くと足に痛みやしびれが現れ、休み休みでないと歩けない「間欠性跛行」が現れます。 以前、「いくら足を温めても冷えが引かなくて……色も紫がかっているのですが、なにか病気なのでしょうか」と、当院を受診されたのは70代前半の男性です。下肢の血流の速度や方向を見るドップラー(エコー)検査や、手と足の血圧を同時に測定し、比を算出するABI(足関節上腕血圧比)検査の結果、ASOと診断しました。 重篤化すると、靴ずれや水虫などの小さな傷口から細菌に感染し、最悪のケースでは足の切断を余儀なくされます。 75歳以上の高齢者の2~3割に無症候性の血流障害が存在するとされるので、日頃からご自身で血流の有無をチェックする必要があります。 具体的な検脈の方法は、①裸足の状態で足の親指と人さし指の真ん中を触る②そこから5センチ程度足首側に下がった位置に指を3本軽く置く──この時に脈が触れない、左右差があると血流障害が疑われます。単なる冷え性と過信しないことが大切です。 (田中里佳/順天堂医院足の疾患センター長)