神秘的な香りを体験 ── 咲くやこの花館「植物で辿るクリスマス」展
楽しく盛り上がるのもいいが、少しはクリスマスを掘り下げてみたい――そんなクリスマス探究派におすすめなのが、大阪市鶴見区の植物園「咲くやこの花館」で開催中の「植物で辿るクリスマス」展。クリスマスにまつわる植物の物語が集められ、トリビアなニュースに満ちている。期間は28日まで。
キリスト生誕を祝う香りの贈り物
「植物で辿るクリスマス」展のサブテーマは、「乳香(にゅうこう)と没薬(もつやく)2000年の香り」だ。 クリスマスはイエス・キリストの生誕を祝うキリスト教の祝祭日。キリストが誕生した際、東方の三賢者がお祝いに駆けつけ、持参したのが、「金」と「乳香」「没薬」だった。 「乳香」と「没薬」は、カンラン科の植物の樹脂を固めた香料。古代エジプトで「神に捧げる神聖な香り」とされていた。生産地が限られ量産できないため、金と交換されるほど貴重だった。 現在もキリスト教会で焚かれているほか、「乳香」はフランキンセンス、「没薬」はミルラと呼ばれ、アロマテラピーに活用されている。「乳香」の収穫管理は代々、「ベドウィン」と呼ばれる砂漠の民たちにまかされてきた。 ナツメヤシも、キリスト生誕とかかわる植物だ。アジア原産のナツメヤシの果実が「デーツ」で、紀元前6000年前から栽培されていた。旧約聖書ではデーツを「エデンの園の果実」と記載。栄養価の高さから妊娠女性の栄養源とされ、聖母マリアもキリストを身ごもった際、口にしたと言われている。
妊娠女性のための栄養食品
毎日3回、アテンダントが香りの実演とデーツの試食会を開催。乳香と没薬はごく少量を焚くだけでも、しばらく館内に神秘的な香りが漂う。日ごろから自宅でお香を焚いているというシニア女性は「東洋と西洋はお香でつながっているんですね」と感心しながら、アテンダントに乳香と没薬の入手方法を質問していた。 ドライフルーツタイプのデーツをかみしめると、素朴な味わいながら濃厚な甘さが口の中に広がる。古代ではぜいたくな食材で、「胎内にいるわが子のために栄養を摂らなければ」という母親の思いが強まったことだろう。