「儲からない」けど「意義がある」社会課題解決に挑む5つのスタートアップ
起業家が非営利スタートアップ支援をする
kubell代表取締役の山本も「PoliPoli社による政策のための寄付基金『Policy Fund』の活動にも第1号冠基金として参画している。本業である上場企業の経営に集中することは大前提だが、継続的にフィランソロピー活動は行っていきたい。意思なく寄付をするのではなく、社会に対してレバレッジがかかる箇所を見極め、金銭だけでない支援もしていくことが重要だと考えている」と話す。 frankyアドバイザーの西川は「審査会では、自分が知らない社会課題を知るきっかけになり、また、社会課題の全体像や種類、深さを知る機会にもなり、学びが多かった。当日は10団体だったが、背景には非営利団体、営利団体も合わせると数百団体いるのではないかと思うと同時に、スタートアップ業界にあるカオスマップのような業界が俯瞰できる術がない。そういうものがつくれれば」としている。 PKSHA Technology代表取締役の上野山は「フィランソロピーに関心があるというよりは、資本主義が介在しにくい社会課題に対して、テクノロジーやイノベーティブな方法で解決することに関心がある。自分が関心のある社会課題に挑んでいる団体などに年間予算を設けて寄付し、クロスボーダーの寄付の試みも始めた。今回の審査会に出てあらためて思ったが、Soilは参画する起業家があと数十倍になるポテンシャルは十分にある」と話す。 最後に、久田はSoilの今後などについて次のように話をした。「ここ十数年で急速にスタートアップ・エコシステムは醸成された。それに伴い、資金調達環境は大きく改善された。それと同じことができるのではと考えている。起業家には、資金があり、事業をつくる能力があり、テクノロジーへの理解もあって、社会的インパクトを志向する感性もある。今年秋には、社会課題に関心がある30~40人の起業家を集めたサミットも開催する予定だ。Soil自体への関心も高く、自治体や金融機関、他団体とも協力した取り組みを始めていく。起業家が非営利スタートアップ支援をする──こうした流れをムーブメントにし、非営利スタートアップ・エコシステムの醸成につなげていきたい」 一般財団法人Soil◎代表理事・久田哲史が2023年1月に設立。「もうからないけど意義がある」事業の非営利スタートアップへの助成を行う。24年5月1日時点で、44団体/個人に対し、総額1.4億円の資金援助や事業支援を実行。 上野山勝也◎PKSHA Technology代表取締役。ボストン コンサルティング グループなどを経て、東京大学松尾研究室にて博士号(機械学習)取得後、2012年PKSHA Technologyを創業。 西川順◎frankyアドバイザー。2008年、赤坂優とともにエウレカを創業。15年、同社を米Matchグループに売却。2018年より再び赤坂とともにfrankyを創業した連続起業家 兼 エンジェル投資家。 村上太一◎リブセンス代表取締役社長 兼 執行役員。1986年生まれ。2006年2月、早稲田大学1年時にリブセンスを学生起業。12年、東証一部(東証プライム)に史上最年少25歳で上場した。 山本正喜◎kubell代表取締役兼 社長 上級執行役員CEO。2000年、大学在学中に兄と共に、EC studio(現Kubell)を創業。CTOとして「Chatwork」を開発。18年6月、代表取締役CEOに就任。 久田哲史◎Datachain代表取締役CEO/Speee創業者兼取締役/一般財団法人Soil代表理事。大学在学中の2007年にSpeeeを創業。18年にDatachainを設立。23年、一般財団法人Soilを設立。
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