「儲からない」けど「意義がある」社会課題解決に挑む5つのスタートアップ
児童養護施設などの職員不足解決を
■児童養護施設などの職員不足解決を 大山 遥|NPO法人 チャイボラ 「きっかけは、児童養護施設の職員の方の『欲しいのはものではなく人なんだよ』という言葉。圧倒的な職員不足という問題を抱える児童養護施設などの社会的養護の職員不足解消を行う日本で唯一の団体です」 貧困や虐待などさまざまな事情を抱え、家族と暮らすことができない子どもたちを公的に養育する社会的養護施設。施設で生活する児童は約3万4000人いる。 大山遥が2018年に設立したNPO法人チャイボラ。社会的養護施設特化のプラットフォーム「チャボナビ」では、施設の情報発信や施設見学会などのサポートをし、施設と求職者をつなげている。19年の開始以降、チャボナビには400近くの施設が登録し、都内の児童養護施設の約9割にのぼるという。会員数は約4500人、施設見学会には6600人以上が参加した。 「施設の運営予算には『広報費』が存在しないため、ホームページすらない施設が少なくないといった構造的問題がありました。施設見学会は私たちが施設とともに始めたことで全国に広まりました」 チャイボラは24年、こども家庭庁による児童相談所職員の採用・人材育成・定着支援事業に採択され、活動領域を広げている。「私たちは『子どもたち一人ひとりが大切に育てられる世の中を目指して』を掲げています。だから、私たちが挑んでいる課題が解決して、私たちの活動が必要なくなることが理想。ただその時には新たな課題に立ち向かっていると思います」 おおやま・はるか◎チャイボラ代表理事。ベネッセコーポレーション在職中に社会的養護施設の職員不足の現状を知り、退職。2017年に任意団体チャイボラ、18年にNPO法人チャイボラを設立。 ■アフリカ農村のDX、世界とつなげて生活水準向上へ 大場カルロス|Dots for 大場カルロスが2021年に設立したDots forのミッションは「2030年までに西アフリカの地方部に住む2億人がインターネットにつながってその利便を享受できる社会を作る」だ。同社は現在、ベナンやセネガルの農村部にて無線通信網を構築し、マーケットプレイスや動画配信など各種デジタルサービスとスマートフォンをセットで販売している。 アフリカの地方農村部には、水道や電気、通信などのインフラが整備されていない1000人規模の集落が点在している。「世界を旅するなかで、先進国と発展途上国の違い、発展途上国でも都市部と地方の農村との違いを見て、農村だけが取り残されていると感じた。僕らが解決したい課題は、インターネットにつながらないために起きる情報格差と収入格差だ」(大場) 同社は集落内に複数の無線ルーターを配置し、Wi-Fiのメッシュネットワークを構築し、「村のデジタルコンビニ」として各種デジタルサービスを提供。スマートフォンを割賦販売し、サービス利用料も含めて提供するかたちだ。サービスは農村での副業支援に特化し、畜産、大工、塗装業などの職業訓練動画でスキルを身につけられ、マーケットプレイスで機材や資材を購入し商品販売などで収入増につなげている。 「最近は、Web3のプレイ・トゥ・アーンや、AI分野のアノテーション(注釈)の仕事を斡旋している。村にいながら外貨を得たり、副業によって住民たちの生活水準が向上し、人生の選択肢を増やすことにつなげたい」 おおば・かるろす◎Dots for創業者兼CEO。Amazonやリクルート、WASSHA、C Channelなどを経て、21年10月、Dots for創業。100カ国近くを旅したバックパッカー。