新しい映像体験を! 「ゴッホ・アライブ 福岡展」の楽しみ方/福岡市
ジャポニズムの時代
ゴッホは、日本の浮世絵に興味を持ち、模写していたことでも知られています。19世紀末のヨーロッパでは「ジャポニズム」と言われる日本ブームが起き、モネやルノワールといった印象派の画家たちが浮世絵の構図や色づかいを取り入れました。
ゴッホも、弟のテオと400点を超える浮世絵を集めたそうです。ゴッホがサン=レミの療養院で描いた「アイリス」(1889年)や「花咲くアーモンドの木」(1890年)は、日本の影響が感じられます。ゴッホが打ち掛け姿の花魁(おいらん)の浮世絵を模写した作品「花魁(渓斎英泉による)」(1887年)は、一生懸命に描いたのだろうとほほえましい印象を持ちました。 黒岩さんは「八百万(やおよろず)の神を信仰し、自然や四季の移ろいに敏感な日本人の感性と、古いものに魂が宿ると考えるヨーロッパ人の感覚とは、似通ったところがあるのかもしれませんね」と話します。
絵筆で描いた”映像”
黒岩さんは熊本市出身。九州芸術工科大(現・九州大)で映像を学びました。大学時代は8ミリフィルムで作品を制作していたそうです。「動くものは『命』の象徴です。アニメーションという言葉に『命を吹き込む』という意味があるように、動くものを表現したいという気持ちは、人が洞窟で壁画を描いていた先史時代から変わらないのではないでしょうか」と言います。
ゴッホが亡くなる直前に描いた「カラスの飛ぶ麦畑」(1890年)は、風にそよぐ麦のざわめきや群れ飛ぶカラスの羽音が伝わってくるようです。 そして、ゴッホの死から5年後の1895年、フランス南東部のリヨンでリュミエール兄弟が映画(シネマトグラフ)を発明。映像の時代がスタートします。 「映像文化の発展によって、エンターテインメントとアートの境界線上にイマーシブ展覧会が生まれました。楽しみながら、芸術を知り始めることができますよ」と黒岩さんは話します。
【ゴッホ・アライブ 福岡展】 福岡三越9階「三越ギャラリー」で、9月13日まで。会期中無休。入場料は一般2500円、高校・大学生2000円、小中学生1500円。原則、日時指定券が必要だが、各時間に空きがある場合は当日券を販売する。会期終了までいつでも入場できる「期間限定フリー券」もある。 問い合わせは同展実行委員会(092-718-4649)へ。
読売新聞