女子バレー、W杯で浮き出た課題に「トスの質」
内瀬戸真実のスパイクがアメリカのブロックにつかまった瞬間、日本の3位以下が確定し、最終戦を待たず今大会でのリオ・オリンピック出場権獲得の望みを絶たれた。 9月5日、名古屋日本ガイシホールで行われたワールドカップ2015女子大会。対戦相手、世界ランキング第一位(8月28日現在)のアメリカと同じ7勝2敗の3位タイでこの試合を迎えた全日本女子は古賀紗理那、木村沙織の巧みな攻撃などで1セット目を奪ったものの、続く3セットを連続で奪われた。第4セットは25対10と大差を付けられての敗戦だった。 「2セット目が勝負でした。勝っている試合は2セット目以降もサーブが非常に良いが、今日の試合は2セット目以降、サーブのスピードが緩くなり、相手のサーブレシーブがAパスになる確率も高かったですね」(眞鍋政義監督) 特にブロックでは圧倒的な力の差を見せつけられた。アメリカのブロックシステムはバンチリードと呼ばれる、ボールの行方に対してブロック動作に入り、ブロックポイントを奪うより、まずは相手のスパイクコースを狭めたり、ワンタッチを取って、後衛のレシーブも含めた総合力でディフェンスに臨む戦略だ。そのブロックシステムにプレッシャーをかけられ日本は自滅、16本ものブロックポイントを奪われた。 大会を通じて見えた課題はいくつかあったが、まず早急に改善しなければならないのはセッターの挙げるトスの質だろう。初戦のアルゼンチン戦では、木村沙織がジャストヒットできたスパイクはたった1~2本。トスとタイミングが合わず、腕を折りたたんで窮屈なフォームで打つ、もしくはしっかりとスイングできず、腕が完全に伸びた状態でボールに触らなければならず、フェイントや軟攻でしのぐしか術がなかった。木村以外のアタッカーともトスが合わない場面が目立ったが、特に初戦はセッターの古藤千鶴のボールを離すタイミングが毎回バラバラで、アタッカーがどこで助走に入っていいのか始動に迷っているように見えた。 その反省を踏まえてか、2戦目以降、高さを意識したトスが上がるシーンも増えたが、大会が始まってからの軌道修正は手遅れだった感も否めない。 相手のブロックの指先や腕の側面をねらい、ボールをコート外に出すスパイクを得意とする木村や古賀が、そのテクニックを十分発揮できている試合は競る。しかし、それができない試合は苦しい展開になる。スピードに固執せず、アンテナ付近まで伸びるトスであれば、空中でブロックを見る余裕が生まれ、スパイクの幅も広がる。木村、古賀を生かせる宮下遥がレギュラーとしてコートに居続けられなかったことも、チームにとっては痛かった。