女子バレー、W杯で浮き出た課題に「トスの質」
そして、もうひとつの課題は、レセプションが崩れたときの攻撃だ。アメリカ戦のあと古賀は「サーブで崩されてコンビを作ることができなかった。攻撃が単調になった」と敗因を振り返ったが、サーブで崩されることは国際大会ではある程度、想定内の出来事である。 今大会、サーブ効果率のトップ10に日本の選手は4名がランクインしている(9月5日現在)。数字だけを見れば同じように相手の守備を崩していることになるが、他国との圧倒的な違いは「崩れたところからどのように攻撃を仕掛けるか」である。そこまで練習を積めていたか、仕上げて大会を迎えていたのかという疑問は残る。 アメリカのような強豪国はもちろん、日本より世界ランキングが下位のチームでさえ近年ではラリーの最中にクイックを混ぜ、崩れたレシーブボールからでも縦のクイックを思い切って使ってくる。対する日本も大会終盤は大竹里歩の縦のBクイックなどを積極的に使うシーンが見られたが、フルセットで敗れたセルビア戦などは日本の総打数171に対し、長岡が51本、古賀が41本とサイド頼りの攻撃になった。サイドの負担が増え、スパイク決定率を34%台にまで抑えられたのが敗因のひとつだ。強力なサーブを武器とするチームとの対戦が続くであろうオリンピックを見据えると、サーブレシーブが崩されても単調にならない攻撃力を身につけなければリオ・オリンピックでの上位進出は難しいだろう。 一方、収穫もあった。2013年のグランドチャンピオンズカップではMB1と名付けられた、本来は2名が入るミドルブロッカーの選手を1名にし、サイドアタッカーを増やす陣営で世間を驚かせた全日本女子だったが、今大会では本来のミドルブロッカーのポジションを務める期待の若手、大竹里歩が一本立ちし、レギュラー取りに向けて存在感をアピールした。大竹の粘り強いブロックがプレッシャーとなり、相手のスパイクミスを誘う場面が幾度も見られた。 前出の古賀も同様だが、バレーボール3大大会にレギュラーとして出場するのが初めてとなる若手選手が世界最終予選に向け、国際舞台を経験できたことは日本にとって大きな収穫だろう。 今大会で出場権を獲得できなかった全日本女子は来年、5月に開催される世界最終予選兼アジア予選でリオへの切符を再びねらう。ワールドカップで中国が出場権を獲得したことにより、アジアの最大のライバルである中国はこの最終予選に出場しないが、厳しい戦いになることは確か。ただし全日本女子の場合、「オリンピックに出場すること」が目標ではなく、あくまでオリンピックで勝つことが目標だ。その目的を見失わず修正点、改善点をどう分析し、チームを立て直すのか、その動向に注目したい。 (文責・市川忍/スポーツライター)