植田日銀総裁、米次期政権の政策や春闘注視-利上げ巡る姿勢変わらず
(ブルームバーグ): 日本銀行の植田和男総裁は25日、今後の金融政策運営について、トランプ次期米政権の動向や来年の春闘に向けた動きを注視していく考えを改めて示した。円安が進行する下でも従来の姿勢に変化はなかった。都内で行われた日本経済団体連合会審議員会での講演で語った。
植田総裁は、2%物価目標実現に向けた移行期の現時点では景気・物価に中立的な中立金利よりも政策金利を低くして緩和的環境を維持し、経済をしっかりとサポートすると言明。緩和調整の時期やペースは「今後の経済・物価・金融情勢次第」とし、国内外のリスク要因を十分注視した上で、日本の経済・物価の見通しやリスク、見通しが実現する確度に及ぼす影響を見極めていく必要があると述べた。
特に米国の次期政権の経済政策を巡る不確実性は大きいとし、日本の経済・物価への影響を注視する考えを示した。国内では、「目先の大きなポイントは春季労使交渉に向けた動き」とし、2%の物価上昇と整合的な賃上げを当たり前のこととして社会に定着させていくことが重要だとの認識を示した。
日銀が利上げを見送った19日の金融政策決定会合後の記者会見で、植田総裁は来年の春闘に向けたモメンタムや1月20日に就任するトランプ次期米大統領の経済政策の影響を見極める必要性を指摘した。総裁のハト派的な発言を受けて約5カ月ぶりの水準まで円安・ドル高が進行する中、今回の講演でも同様の見解を繰り返し、追加利上げの時期も明確に示唆しなかった。
伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、今回の講演では追加利上げに関して、米国政策と国内の賃上げ状況を見極めていく必要があることを再確認しただけで、「12月会合から何も変わっていない」と指摘。ただ、現在の円安水準が続けば1月時点で輸入物価が前年比プラスに転じて国内物価上昇への配慮が必要となるとし、「利上げの必要性が高まる」と語った。
東京外国為替市場の円相場は対ドルで一時157円37銭まで下げ幅を拡大した。植田総裁の講演を受けて売りが優勢となり、日中安値を更新した。