限界値を決めないスケールで描け。スタートアップが成長するうえで意識したい問い
今後注目するのは「AIとロボティクスの掛け合わせ」
テクノロジー領域を中心にスタートアップへの投資を行ってきた千葉氏だが、現在注目しているのは、AIとロボティクスの掛け合わせで社会課題を解決していく領域であると話す。 「現在はAI単体ではなく、他の技術と掛け合わせることで、新たに価値が生まれるフェーズになってきています。例えば「農業×ロボティクス×AI」は、主戦場の1つだと思っています。農業は、食糧問題や人手不足など解決すべき課題を抱えている一方、テクノロジーの導入が遅れている領域です。こうした課題を解決するのがアグリテックの使命で、千葉道場フォンドでも『ファームノート』という牛向けウェアラブルデバイスを開発する会社に投資を行っています。また、日本には老朽化したインフラがたくさんありますよね。例えばトンネルや橋、排水管、水道管などです。このような老朽化したインフラの点検は、人手不足や危険性などの課題があり、効率的に行うことは困難です。そこで、ロボットが自動撮影を行い、AIが亀裂を判断してアラートを上げるようなソリューションが、今後普及していくと考えています」 最後に、千葉氏の今後の目標も聞いた。 「日本のスタートアップ市場をアップデートし続けたいと思っております。そのための手段として、千葉道場コミュニティを通じて起業のエコシステムをつくりたいと考えています。なかでも、シリアルアントレプレナーを増やすことが重要だと思っており、コミュニティ内に起業2周目や3周目のシリアルアントレプレナーが増えていくことで、その方々が1週目の起業家にとっての手本になり、ノウハウも共有できる。それが結果的にスタートアップ全体の底上げになると信じています」 千葉氏の話を聞くなかでとくに印象的だったのが、投資先を見極める際に「5年後に100億円の売上を起こすことはできますか?できるとしたらどうやりますか?」という宿題を出す点だ。あえて、自分が想像している目標よりも飛躍した目標を設定することで、大きなスケールで物事を考えられるようになるのはうなずける。もちろん高い目標を達成するための道筋を、解像度高く描くことが大前提であるが、スタートアップが成長していくために意識したい問いではないだろうか。
文:吉田 祐基 /写真:小笠原 大介