限界値を決めないスケールで描け。スタートアップが成長するうえで意識したい問い
創業から上場まで見届けられた会社は思い入れ深い。事業ではなく人を見て投資していた時代
これまで千葉道場ファンドやドローンファンドの組成をはじめ、インターネット領域を中心としたスタートアップ60社以上に投資をしてきた千葉氏。数多くのスタートアップを見てきたなか、印象に残っている企業について、資産運用を自動化できるロボアドバイザーを提供する「ウェルスナビ」を挙げる。 「創業の瞬間から上場まで見届けられた会社は、やはり思い入れ深いです。スタートアップへの投資は子育てみたいなもの。生まれたての赤ちゃんのときから成人式までの過程を見るとグッとくるのと同じで、スタートアップも最初に起業したときはまだ何者でもなく、アイデアはあるものの実現性に乏しい状態。そのときに出会って投資をした企業が成長し、東証でカーンと鐘を鳴らす様子を見るとやはり感動するんです。そういった意味で、初期の頃から上場までを見届けた『ウェルスナビ』は印象に残っていますね」 なかでも、創業者の柴山 和久氏、個人に惹かれたと話す。 「現在は投資するとき『人、事業、市場』の3つを見ていますが、個人でエンジェル投資を行っていた時代は、事業というより、“人”を見て投資をしていました。人のどんなところを見るかというと、まずはキャラクターです。私個人の好みになるのですが、着実に事業を進めていけるという観点から、派手さよりもコツコツと実行する方であること。 2つ目が最も重要で、人生のなかでそれをやる理由があるかどうか。例えば柴山さんは財務省出身で、いわば官僚のエリートです。東京大学を卒業後、日英の財務省で合計9年間を過ごし、その後、マッキンゼーではウォール街に本拠地を置く機関投資家を1年半サポートするなど、アメリカで活躍されて日本に戻ってきました。こうした経験のなかで、日本と海外における資産運用の違いを感じ、日本でも安心して資産運用できるサービスを立ち上げようと、『ウェルスナビ』を創業したのです。このような背景があり、その事業をその人がやる理由が明確にあるのかを見ています。さらに、当時のスタートアップ界隈には、柴山さんのようなキャリアを歩んできた方はあまりいませんでした。だからこそ、こういうキャリアの人がスタートアップをやる時代になったのだと感動したんです。柴山さんがスタートアップ業界に来たことが、一つの転換点になる。つまりは、スタートアップ起業家の窓口が広がると思い、より一層応援したいという気持ちで投資をしました」