限界値を決めないスケールで描け。スタートアップが成長するうえで意識したい問い
5年後に100億円の売上を上げる方法は?投資先を見極めるために出す宿題
さらに、投資するスタートアップを見極めるために、ある宿題を出すのも千葉氏ならではの特徴だ。 「投資判断を行う際、最低でも2回か3回直接お会いし、必ず宿題を出すようにしていました。例えば『5年後に100億円の売上を起こすことはできますか?できるとしたらどうやりますか?』という質問を投げかけます。当然パッと答えられないんですね。そこで思考を切り替えてもらい、『5年で100億円の売上を達成する』という目標から逆算し、どれだけ解像度高く、その道筋を真剣に考えることができるのかを見るのです。そして、ここが重要なところで『次の面談は、あなたからご連絡ください』と伝えます。つまり、宿題は出すものの私から期限を区切らないのです。それによって2日後には『だいたい見えてきたのでアポください』と言う方もいれば、1カ月後に連絡がきて『やっとまとまりました』という方もいます。ただ、実をいうと半分以上の方からは連絡が来ないんです。これを私のなかで、一次審査に設けているところもあります。この宿題を受けてから考えるプロセスが重要で、早ければ良いというものではなく、速さと質の部分、つまりどれだけ解像度高く100億円の売上を起こすための道筋を描いているのかを見ます」 この宿題に打ち返せるかどうかは、起業後の成長において重要な要素だとも話す。 「100億円の売上を起こすためには、絶対無理と思っていたことを、実現できるストーリーに変えなくてはならないので発想の転換が必要です。とくに起業経験のない人は、自分の個人資産を起点に戦略を考えてしまうところがあるのですが、仮に10億円のキャッシュがあるとしたらどんな戦い方ができるのか、自分が持っているお金の上限を取っ払うことで大きなスケールで物事を考えられるんです。その結果、ビジネスの規模感も大きくすることにつながります。こうしたスケール感で考えるのに慣れているのが、シリアルアントレプレナーと呼ばれる、2週目、3週目の起業家です。例えば『株式会社 令和トラベル』の篠塚 孝哉さんはまさに2週目で、最初のシードラウンドから22.5億円の資金上達に成功しています。私自身も、最初に取締役を経験した『KLab(クラブ)』を上場するまでに10年かかりましたが、コロプラは4年で上場しており、時価総額も4,000億円の規模に育てることができました」 これまでスタートアップへの投資を行い、成長過程を見るなかで、千葉氏自身が学んだ教訓もあるという。 「起業家の成長スピードは速いということです。例えば最初に会ったときは、ピッチ資料には抽象的なことが書いてあり、実現性も乏しいアイデアも、私の宿題に打ち返すなかで、一年後には目を見張る成長をする若い人を数多く見てきました。やはり、ビジネスを真剣に考える過程で、思ってもみない成長を遂げるのが起業家であり、良い起業家は、第一印象と未来の印象が激変するぐらい成長スピードが速いんです。その成長速度に私自身も遅れないようにしたいという思いが、新たな挑戦のエネルギーになるのです」