微生物で植物残さを糖に 培養液に入れるだけ コスト大幅減 国際農研
バイオガス発電にも利用可能に
国際農林水産業研究センター(国際農研)は、2種類の微生物の力で、植物残さや繊維くずなどを糖(グルコース)に変える方法を開発した。微生物の培養液に残さなどを入れるだけで反応が進み、現状の工業的な分解手法に比べ「圧倒的に低コスト」とする。効率的な糖化技術として、廃棄物の削減や有効利用につながるとみる。 植物残さには硬い細胞壁が含まれ、これを分解していくと糖になる。現状行われている工業的な分解手法では、高いコストがかかる酵素処理を行う必要がある。 国際農研の方法は、2種類の微生物の培養液に残さなどを入れるというもの。一つの微生物が、細胞壁の主成分であるセルロースを、グルコースが二つ連なった形のセロビオースに変え(セルラーゼ反応)、もう一つの微生物がセロビオースをグルコースに変える(ベータグルコシダーゼ反応)。 できたグルコースは培養液中に出てくる。条件にもよるが、濃度で最大7%ほどまで溶け出すという。古紙や服飾品も糖化できる。綿とポリエステルが混ざった繊維の綿だけを糖化させて、残ったポリエステルをリサイクルする、といったことができる。 微生物は増殖させて使い続けられるため、使い捨ての酵素処理と比べてコストが大きく抑えられるという。2種類とも高温の環境を好むため、60度で反応させればカビなど他の菌の増殖も防げる。 糖になればバイオガス発電にも使える。研究担当者は「これまで堆肥利用や産廃処理するしかなかったものを有効利用できる」と話す。実用化に向けて、北海道のビール工場から出る麦かすで実証試験をしている。
日本農業新聞