人生最大の挑戦からたった1年半で強制引退…元ガールズケイリン選手・濱野咲さん「落車の恐怖乗り越えられず」/リンカイ!コラボインタビュー
ーールーキーシリーズを終えた初戦が地元の京王閣でした。その時の心境を教えてください。 養成所とプロのレースは全然違うと聞いていて、それに向けて中村由香里さんをはじめ先輩たちにダッシュの練習をしていただきました。 でもやっぱりビックリしましたし、怖かったです。それまでは同期だけの開催だったのでレース前の時間も会話があったりしたんですけど、その時は同期がいなくてぼっちだったんで……ちっちゃくなっていた気がします。地元だから知り合いも見に来てくれて、緊張しすぎちゃって。1レース終わっただけでもう、何が何だかわけがわからなかったです。 養成所だとヨコも後ろ見も禁止されていますが、プロだと後ろを見ない人がいないぐらい。知識として知っているつもりでも、理解はできていなかったんだなと気付きました。1つ1つのレースに車券を賭けていただいているし、自分の勝利もかかってるじゃないですか。だからみんな着を獲りたい、賞金を獲りたい。そういう感覚に気付けていなかった自分はぬるかったな、と思いました。 ーーそこからどのように先輩に食らいついていきますか? レースの流れについていくことが一番重要だと思いました。自力がないから、強い選手の後ろにつけること、流れについていくことでやっと勝負をさせてもらえる。養成所でも1番を獲ったことがなかったのに、先輩たちと戦って1着を目指さなきゃいけないので……まずはついていって、そこからどうするかだなって。 例えば児玉碧衣選手についていくなら位置取りは後ろの方が加速をつけてマークしやすいとか、石井貴子選手(東京)は先行することが多いからスタートを練習して前の位置を狙った方が良いとか。レースをこなしていくうちに、映像を見るだけではわからないことがわかってきました。
ーー良いレースができたと感じた瞬間はありましたか。 デビューして半年あたりから調子が上向いてきました。2021年12月の取手では、初日に3着、2日目は7着だったけど上りタイムが良かったので、最終日も期待していました。もし着に入れたら、競走得点がぐんと上がるんですよ。 そしたら転んでしまって。初めての落車でやっぱり怖くて、足が動かなかったんです。そのあと5月にもう1回転んで顔も怪我しちゃって……接触が怖くなってしまいました。自分ではぴったりついているつもりが、レースダイジェストで見ると1車身空いていたりして。落車後は選手が動くときの“踏み出し”についていく練習をしていたんですけど、「こんなに離れてたらついていけるわけないじゃん」って、先輩たちに指摘されました。 3着に入った時、すごく嬉しかったんですよ。それまでデビューしてから一度も確定板に乗ったことがなかったので。この嬉しかった気持ちをもう1回味わいたい、と意気込んでいたけれど、落車で気持ちが途切れてしまったところはあるかもしれないです。 落車の恐怖は消えないし、うまく走れない。競走得点を上げたくても結果が出ずストレート代謝が見えてくる。こんな気持ちでやってちゃダメだよなあと思っても、どんどん次のレースがやってきて。それで石井寛子さんに相談したら「走らないと怖さ消えないよ、もっと怖くなるよ」って。 石井さんのアドバイス通りにしましたが、今振り返ると無理に自分を奮い立たせていたところもあったかもしれないです。どうしようって悩む時間がないくらい、競輪のことを考えようって。