コレステロールを下げると、むしろ死亡率は上がる…あなたの健康常識を破壊する衝撃データ
健康診断で「コレステロール値が高い」と指摘されたら、どうすればいいのか。医師の和田秀樹さんは「気にしなくていい。むしろコレステロール値が低い人のほうが、死亡率は高い」という――。(第1回) 【図表】あなたの健康常識が崩れる「総コレステロール値と死因」の関係 ※本稿は、和田秀樹『コレステロールは下げるな』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。 ■コレステロールを下げてはいけない2つの理由 私はこれまで「血糖値は下げなくていい」とか「血圧は下げなくていい」と言ってきました。しかしコレステロールに関しては“下げてはいけない”に近いものだと考えています。その理由は追い追いお話ししますが、まずは大事なポイントを2つ押さえておいてください。 一つは、コレステロールが含まれる食品を食べたときに、一定量までは「血中コレステロール」が増えていくのですが、それを超えると変わらなくなることです。下の図表1のように「天井値」に達すると、それ以上は全く増えなくなるのです。 もう一つは、コレステロールの“出元”です。みなさんは、コレステロールは食物に含まれていると思っているでしょう。だから「摂り過ぎてはいけない」と節制するわけですが、事実は少し違います。 実は、コレステロールはおよそ8割が体内で作られ、外部(つまり食物)から摂取するのは2割ほどしかありません。 このためコレステロールの多い食事をしても、少ない食事でも、最終的な血中コレステロールの量はそれほど変わらないわけです。 先ほど「天井値に達すると増えなくなる」と話しましたが、食物から摂取するコレステロールが多ければ、体は自然に生成を減らします。反対に、摂取量が少なければ体内での生成を増やすのです。
■逆にコレステロールを下げると死にやすい 健康診断をした結果、「コレステロール値が高いですね。脂の多い食事は控えてください」と言われたことのある人もいるでしょう。「このままだと心筋梗塞になりますよ」と脅された人もいるかもしれません。しかし、この医師の助言は間違っている、と言えそうです。 事実は逆かもしれません。 コレステロールを下げると心筋梗塞になりやすい。がんにもなりやすい。脳血管系の病気にもなりやすい。死亡率も高まります――。 これは私が長年、高齢者医療の現場にいて実感していることですが、その根拠となるデータが実際に出されています。 この図(図表2)は柴田博医師からお借りしたものですが、コレステロール値の低いほうが総死亡率はグンと高くなっていることが、一目瞭然です。 え、本当? と目を疑いたくなりますよね。でも、事実です。 これは5万2421名を6年間追跡研究した結果です。対象になったのは「総コレステロール値が220mg以上で、シンバスタチンという薬を投与された人」です。全国の「35~70歳の男性」と「閉経女性」と言いますから、この本の読者層にも近いかもしれませんね。 注目すべきは、血中コレステロール値が180mg未満の群の死亡率が高いことです。コレステロール値が200~279の3つの群では、死亡率はほぼ同じですが、199以下になると高まり、180未満になると一気に高くなることがわかります。 また「がん」や「事故・自殺」で死ぬ人は、コレステロール値が低いほど増えていることがわかります。そして「コレステロールを下げよ」と言われるいちばんの原因である心筋梗塞も、180未満になると増えているのです。 ■あなたが信じている「健康常識」は間違っている ちなみに現代の医療では「総コレステロールの基準値」は、以下のように定められています。もちろん私は、この数値は信じていませんが。 ---------- 【基準値】140~199mg/dL 【要注意】200~259mg/dL、または139mg/dL以下 【異常値】260mg/dL以上 ---------- いかがでしょう? そして、みなさんはどの範囲ですか? 例えば、健診の結果、コレステロール値が240mgの人がいたとします。医師は数値を見て「要注意ですね。異常値にも近いので、基準値まで落とすために薬を出しましょう」と言います。でも、その言葉を鵜吞みにして、コレステロール降下剤を服用することは、実はとても危険なことなのです。 先の図表2では280mg以上の群は、心筋梗塞による死亡率が増加しています。しかしこの群には「家族性高脂血症」という先天性のリスクを持つ人も多数含まれており、この人たちを除くと有害性が薄れます。 検査の数値だけを見て、なんでもかんでも「コレステロールを下げよう」と思うのではなく、持病の有無なども併せて判断すべきなのです。 みなさんは、これまで言われ続けてきた“健康常識”なるものの影響で「コレステロールは害悪」と信じ込まされています。しかしコレステロールを下げてしまうと、がんや事故・自殺だけでなく、血管系の病気も増えていくのです。