医師×芸人・しゅんしゅんクリニックP「40代はプラスマイナスの精神で生活すること」
◇『さんまのお笑い向上委員会』出演が転機に 近年、同世代の芸人からの相談も増えてきた。彼ら彼女らにとって、自分の体のことや健康診断の結果など、気軽に相談できるしゅんPは心強い存在だろう。今年の4月に発売された彼の新刊『40歳を過ぎるとなぜ健康の話ばかりしてしまうのか?』(ヨシモトブックス)のタイトルがまさにそうだ。 「お医者さんの友達って、なかなかいないでしょうし、わざわざ病院に行って気軽に相談もできない。そういうときに、この本をご覧いただきたいです。医者の友達がアドバイスをしてくれている、と思って読んでいただければ!」 医学や健康に関する本は、どこか難しいイメージがあるが、しゅんPの本は読みやすい印象があった。彼自身も明快な文章を心がけて書き上げたという。 「昔、コンビを組んでいたときに医者ネタをやったんですけど、お客さんに伝わらないことがあったんですよ。そこで噛み砕くことを意識してネタを作るようになりました。根底として“認知度を上げたい”という気持ちがあるので、みんながわかることを書かないと意味がないと思ってます」 芸人活動が執筆業にも役立ったというわけか。現在、しゅんPは曜日固定で2つの病院に勤務。空いている日にライブやメディア出演など、芸人活動をしている状況だ。そもそも、なぜ芸人になったのか。当初は医者を目指していたというが……。 「僕の父が医者で、自然と自分も医者になりたいと思っていました。父の仕事場にも行ったことがあって身近でしたし、高校の模試で志望校に早稲田や慶應を書くなか、医学部も書いていて。“なんとなく”目指した感じです」 大学時代、医者を目指すしゅんPに大きな転機があった。その出会いが彼の人生を変えることになる。 「もともと、有名人になりたい願望はありました。お笑いも好きだったんですけど、医学部に入った大学時代、当時付き合っていた彼女の影響で『爆笑オンエアバトル』とか『M-1グランプリ』を見るようになって、そこでメディアに出る前の“若手芸人”という存在を知ったんです。その姿を見て“カッコいいな”“あの世界に入りたいな”と思いました」 その後、吉本の養成所NSCに入り、ほどなくして芸人デビュー。当初はコンビを組んでいたが解散し、ピン芸人として劇場に立っていた。 そして、医者あるあるをメロディーに乗せて歌い踊る「ヘイヘイドクター」で爆笑をかっさらい、『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系列)のモニター横芸人としてブレイク。彼自身も、同番組への出演は大きかったと振り返る。 「芸人として、完全にターニングポイントになった番組です。ただ、自分としてもウケたなとは思いつつも、手応えを感じたかと言われると、なんとも言えない状態。そんなときに、他の芸人のチーフマネージャーさんから“(今後に向けてネタを)用意しとけよ”と声をかけられて……“あるかもな”と思いました」 番組出演をきっかけに、しゅんPの知名度は飛躍的に上がった……が、こんな悩みも。「医者芸人」として注目をしてもらったものの、自身としては“医者と名乗っていいのか……”という葛藤があったという。 しゅんPは、大学を卒業後に2年間研修医として働き、NSCに入学した。初期臨床研修でさまざまな科を回った経験はあるものの、いわゆる専門医として働く普通の医師とは違う道を歩んできた。 そうした後ろめたさがあるなか、現在働いている病院『埼玉みらいクリニック』の岡本宗史先生から誘いがあり、医師として働くことになる。 「最初は、医者芸人と名乗ることに躊躇していたんですけど、病院で働くようになったことで、“医者芸人と言っていいのかな”と思えるようになりました。岡本先生にはすごく感謝しています」 ◇医師×おばあちゃんの相性抜群ユニット 近年は新たな挑戦も。現在77歳の“若手芸人”おばあちゃんと一緒に、ユニット「医者とおばあちゃん」を組んで賞レースに挑んでいるのだ。おばあちゃんは、高齢ながら若手芸人がしのぎを削る劇場『神保町よしもと漫才劇場』で、レギュラーメンバー入りした異色のピン芸人。 「本の編集者さんに、おばあちゃんと接する際は、大きな声を出す・段差に気をつける・遅い時間にネタ合わせをしない・なるべく向こうの家に行く、などを気をつけていることを話したら、“すごく面白いですよ”と言われて、“これって面白いことなんだ”と気づきました。僕としても、おばあちゃんと話していると“医者って傲慢だったな”とか“患者さんってそんなこと思ってたんだ”とか気づけて、勉強になるんですよ」 おばあちゃんと今後どんな活動をしていきたいのか。 「M-1はもちろん、テレビでも漫才をしたいです。おばあちゃんとの漫才は、高齢者の方が見ても面白いあるあるが詰まっているので、老人ホームや病院でネタをして、笑っていただきたいという夢があります。おばあちゃんの話をみんなに聞いてほしいですし、それを見て元気になってほしい。僕らの漫才を見て元気になってくれたら、日本を活気づけられるんじゃないかなと思います」 (取材:浜瀬 将樹)
NewsCrunch編集部