【チャレンジC回顧】“フロックではない”ラヴェルが完全復活 成長曲線と厩舎の努力が合致しここから最高潮へ
ラヴェルの目立つ脚力
さて、レースは29年ぶりに京都で行われた。暮れの京都開催は1990年以来34年ぶり。体内に競馬カレンダーが仕込まれているファンにとって違和感だが、これは関係者にもあったりするのか。 ベラジオオペラが制した昨年のチャレンジCは、レース自体が後半1200mすべて11秒台というハイレベルなラップ構成だった。京都開催の今年も前半1000m通過58.4と速く、バビット、アウスヴァール以下好位勢も互いにプレッシャーをかけ合い、先を急ぐ競馬になった。後半1000mは59.8。好位勢は後半、ギアをあげようにもあがらなかった。 中団にいたラヴェルが直線で抜け出すと、ラスト400mは11.6-11.8。中団より前、勝負圏内で流れに乗ってレースを進めたライバルたちとは脚力が違った。ラヴェルの末脚が目立ったレースといっていい。馬群で我慢し、気持ちを切らさずに走れたのは厩舎の工夫の結果だろう。京都の内回りらしい極端なペースアップがない競馬だったが、元々の内容を振り返れば、ギアチェンジにも対応できる。好走する幅が広がれば、勝つチャンスも増す。これが収穫だ。 2着ディープモンスターは外から追い込んできた。今夏、自力勝負ができる手応えを感じたものの、折り合いを欠いた前走を踏まえ、再び溜める競馬へ。先行勢が厳しく、流れが向いたために、2着にきたが、上がり600m35.0はラヴェルと同タイム。決して鋭く伸びたというわけではない。自力で勝ちにいけないと、なかなか勝利は遠い。まくりなど、大胆な策がほしい。 3着エアファンディタもまた流れが向いた一頭。長期休養明けからなかなかきっかけがない状態だったのを踏まえ、あえて後方で脚を溜める競馬で突破口を開こうとした作戦が当たった。これを契機に再び上向きになるか。今後に注目だ。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。
勝木 淳