2023年「アパレル小売業」業績、コロナ禍前を上回る ECサイト活用・インバウンド需要の取り込みが成長のカギ
2023年「アパレル小売業」業績調査
長引く個人消費の低迷にコロナ禍が追い打ちをかけ、苦境に陥ったアパレル業界に薄日が差してきたようだ。国内アパレル小売業2,443社の2023年決算(1-12月期)は、売上高が4兆8,891億5,300万円(前年比9.2%増)、最終利益が2,451億1,800万円(同41.0%増)で、2年連続で増収増益だった。 緊急事態宣言の発令や外出自粛、店舗の休業、消費低迷など、コロナ禍でアパレル小売業者の受けた影響は深刻だった。最も影響が大きかった2021年の売上高は4兆2,894億9,900万円で、コロナ禍前の2019年を5,860億4,700万円も下回った。だが、その間に、SNSや自社ECサイトで販売するD2C業者やSPA(製造小売業)などが台頭し、新たな販売シーンがアパレル業界の復活を支えている。 新型コロナ5類移行による人流回復や在宅勤務縮小に加え、コロナ禍で加速したEC販売の流れによる新規顧客の開拓は堅調だ。さらに、インバウンド需要の急回復、大手ファストファッション業者の牽引で、2023年のアパレル小売の業績はコロナ禍前の2019年を上回る水準まで伸長した。 ただ、長引く円安や海外の人件費上昇圧力は、衣料品の輸入価格の高騰など、コストアップを招いている。大手を中心に、SPA(製造小売業)体制による流通コスト削減などの取り組みを強化しているが、小・零細企業には負担が重く、業績の二極化がさらに進むことが懸念される。 また、海外の越境EC業者に対抗できるネット販売向けプラットフォームの拡充など課題も多く、今後もアパレル小売業者の業績伸長が続くか、注目される。 ※国内のアパレル小売業者は、中分類57「織物・衣服・身の回り品小売業」(細分類5712「寝具小売業」を除く)を対象に集計した。単体決算で最新期を2023年1月期-12月期とし、5期連続で比較可能な2,443社を抽出、分析した。