2023年「アパレル小売業」業績、コロナ禍前を上回る ECサイト活用・インバウンド需要の取り込みが成長のカギ
増減収 増収企業数が減収企業数を上回る
2023年の増収企業の割合は37.9%で、減収企業の29.3%を8.6ポイント上回った。 コロナ禍の2020年以降は、3年連続で減収企業が増収企業を上回った。だが、アフターコロナの人流回復などの好影響、物価高もあって、2023年は増収企業と減収企業の割合が逆転した。 一方、円安や原材料費高騰などで仕入価格が上昇しているにも関わらず、売上が横ばいの企業は32.6%に拡大している。 また、増収企業率はアパレル製造の55.3%やアパレル卸の53.9%を大幅に下回り、消費者に近い分、価格転嫁が進んでいない様子が透けて見える。
増減益 増益企業数が前年から微減
2023年の増益企業率は33.6%で、前年34.5%から0.9ポイント低下した。雇用調整助成金などコロナ関連支援の効果もあり、2020年以降は2年連続で増益企業の割合が上昇していた。 しかし、コロナ関連の支援金の終了や物価高によるコストアップの影響などもあって、2023年はアパレル小売業者の収益改善にブレーキがかかる形となった。
対前年収益別 増収増益企業率が改善
対前年の収益別では、増収増益企業が22.9%を占め、2020年以降、3年連続で割合が上昇した。 また、2020年に44.7%と半数近くを占めた減収減益企業の割合は、2023年は15.3%まで低下し、コロナ禍で深刻な苦境に陥っていたアパレル小売の業績改善が進んだ。 一方で、増収減益企業の割合は2020年の4.8%から、2023年には11.0%まで上昇した。アフターコロナでの売上の拡大以上に、円安による海外からの仕入れ価格の上昇や人件費高騰など、コスト負担の増加は著しく、採算面が悪化している企業が目立つ。 また、コロナ禍での各種支援金などの影響もあって、2021年に14.8%まで上昇した減収増益企業は、2年連続で割合が低下し、2023年は7.8%にとどまった。 売上増でもコストアップにより収益を伴わない“利益なき成長”に注意が必要だ。